ひらめきブックレビュー

苦手な人と対話する 相手の性格を見極め対処する方法 『世界にバカは4人いる』

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ビジネスパーソンにとって、悩みの多くは「人間関係」から端を発している。もし、あなたが「どうしてあの人は……」といった悩みを抱えているとしたら、自分とは異なる性格の人の思考プロセスを知り、行動パターンを推測できるようになることで、解決の糸口につながるかもしれない。

本書『世界にバカは4人いる』(オーグレン英里子訳)は、人間の性格を「赤、黄、緑、青」の4つのタイプに分類。それぞれがどのように認識し、行動するのかを解説している。タイトルにある「バカ」というのは「自分とは違うタイプの人間」のこと。異なる性格の人とのコミュニケーションを成功させるカギは、相手を知ることで、その心に近づき、自分自身の適応力を向上させることにあるという。

著者のトーマス・エリクソン氏はマネジメント・コンサルタント。スウェーデンではコミュニケーション研究の第一人者として知られている。監修者の中野信子氏は脳科学者。

■相手によって有効なフィードバックの仕方は変わる

例えば「赤」の特性を見てみよう。主導型で、リーダーシップがあり効率的であるが、支配的で押し付けがましく厳しい。「時は金なり」とばかり常に急いでいる人も赤タイプだ。「黄」は感化型で、外向的で人を活気づけるが、わがままでエゴが強い。「緑」は安定型で、支援的で信頼でき人の役に立ちたいと思っているが、頑固で扱いにくい。「青」は分析型で、きちょうめんで思慮に富んでいるが、批判的で気難しい。すでに知り合いの顔や自分の顔が頭に浮かんできたかもしれない。

自分と同じ色であれば、相手を理解することは比較的容易だ。一方で、「赤と緑」「青と黄」の組み合わせは相性が悪く、互いにネガティブなイメージを抱きやすいようだ。自分と同じタイプだけではないのは世の常で、特にビジネスでは苦手なタイプとも付き合わなくてはいけないこともある。例えば、相手が「赤」タイプで、自分とは「合わない」とする。しかも、行動の間違いを指摘しなくてはいけない場面となってしまった。どうすればよいだろうか。

「赤」タイプへフィードバックを行う際は「包み隠さずに話すこと」が重要だという。競争心が強い特徴があるが、注意を効果的に与えるにはそれをそいでいく必要がある。そのために、誤りの例を具体的に挙げて、遠回しに言わない。事実関係にこだわっていくことがポイントとなる。相手に遠慮してストレートに伝えないことのほうが問題となりやすい。

■コミュニケーションの決定権は相手にある

コミュニケーションの難しいところは「決定権が常に相手にある」ことだ。自分の言葉を相手がどうとらえるかはこちら側では決めることができない。にも関わらず、私たちは無意識に自分の思考の枠組みのなかで「こう受け取ってほしい」と考えているのだ。コミュニケーションを円滑に進めるためのポイントは、まずは「決定権は相手にある」という前提を意識すること。本書を読み、「苦手なあの人は実はこう考えていた」と気づくだけでも、新しい付き合い方が見えてくるにちがいない。

今回の評者=倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

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