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勝ち続けるネットフリックス 個性の対立が磨く経営力 『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』

2019/9/12

話題になった映画を自宅で見たいと思ったとき、テレビで放映されるのを待ち切れない人は、かつてはDVDレンタルの店に出かけ、借りてきて楽しむのが一般的だった。しかし、わざわざ行ったのにお目当ての作品がレンタル中で、すごすごと帰る羽目になることも。決められた期限までに再び店におもむき、返却しなければいけないのも面倒だった。しかも遅れれば延滞料金を取られる。

今なら、そんな煩わしさは味わわなくてもいい。VOD(ビデオ・オン・デマンド)方式の動画配信サービスのおかげで、自宅から一歩も出ずに見たい映画を楽しめる。群雄割拠の定額制動画配信サービスの中でも近年、急速に日本でもシェアを伸ばしているのがネットフリックス(NETFLIX)だ。

本書『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』(牧野洋 訳)は、ネットフリックスによる創業からの波瀾(はらん)万丈の物語を描くノンフィクションだ。同社は1997年に米国で創業し郵送による「延滞料金なし」のオンラインDVDレンタル事業をスタート。今ではオリジナル映画製作も手がけ、190カ国以上で1億5100万人もの有料会員を抱える(2019年第2四半期)、世界最大級のエンターテインメント企業の一つとなった。

著者のジーナ・キーティング氏は、米国UPI通信、英国ロイター通信などの記者として経験を積んだフリーランスの経済ジャーナリスト。本書の原書は2012年に出版されたものだが、本書では、その後2018年までの状況を「日本語版特別寄稿」として追記している。

■精緻なレコメンドエンジンが強みに

ネットフリックスの創業者は、リード・ヘイスティングス氏(現CEO)とマーク・ランドルフ氏。2人ともすでに起業家として、起業を志す若手の間で「天才」とあがめられていたという。

ランドルフ氏の「(アマゾンのように)インターネット上で何かを売りたい」という思いつきに、ヘイスティングス氏が賛同したことから始まったネットフリックスだが、2人の共同創業者の性格や思考の方向性は、正反対だったという。

マーケティングの専門家だったランドルフ氏はフレンドリーな性格で、「消費者との感情的なつながり」を重視した。一方のヘイスティングス氏は理性を重んじ数学に魅了されていた。冷徹で頑固な性格の彼は、人間行動を数理的に分析することに熱中した。

この2人が一緒につくったネットフリックスは、使いやすいユーザーフレンドリーなウェブサイトのインターフェースとともに、ユーザーの視聴行動の精緻な分析によるレコメンドエンジンなど数々の「強み」を手に入れることができた。

2人の共同創業者をはじめ、彼らに協力する多くの人々は、対立や葛藤を乗り越え、外部環境に振り回されながら、いかに世界有数の「コンテンツ帝国」を構築できたのか。ぜひ本書で確かめてみてほしい。

今回の評者=吉川清史
情報工場SERENDIP編集部チーフエディター。8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」の選書、コンテンツ制作・編集に携わる。大学受験雑誌・書籍の編集者、高等教育専門誌編集長などを経て2007年から現職。東京都出身。早大卒。

NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業

著者 : ジーナ・キーティング
出版 : 新潮社
価格 : 1,944円 (税込み)

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