社会的養護への見識が子供の未来開く 大阪府立大学【教授の誌上講義】 2030年の社会課題と向き合う教育と研究

現在、様々な家庭的事情によって親と暮らせなくなり「社会的養護」を必要とする子どもの数は全国で約4万5千人に上る。ここ数年最も多い理由が、保護者からの虐待だ。今、こうした子どもたちの心のケアや、社会的進出のサポートなど、子ども福祉の支援体制を整えることが急務の課題である。

地域保健学域教育福祉学類教授 伊藤嘉余子氏

社会的養護には大きく二つあり、児童養護施設などにおける施設養護と、里親や特別養子縁組などにおける家庭養護があります。日本は先進国の中でも里親が少なく、施設養護を中心に行ってきましたが、国連からの指導もあり、少しずつ家庭養護を増やす流れになってきました。

大阪府立大学 地域保健学域 教育福祉学類教授 伊藤嘉余子氏

2017年には国の養育ビジョンとして里親委託率5割を目標に掲げ、2019年現在では過去1割だった里親委託率が2割まで上昇しています。各自治体で社会的養護の体制を整える動きが広がる中、即急に対応するべき課題の一つが里親支援です。里親家庭では、保育士や心理職など専門職がそろう児童養護施設とは違い、すべての負担が里親自身にかかります。そのため委託期間満了までにリタイアしてしまうケースも少なくないのです。里親たちが相談しやすい環境づくりや里子たちが差別を受けない社会づくりは、今後の重要な課題となっています。

ネグレクト(育児放棄)などの虐待を受けてきた子どもの多くは、基本的な生活習慣を知りません。また、人を頼る経験が乏しいため、人間関係の築き方がわからない子もたくさんいます。そんな子どもたちに、当たり前の生活を経験してもらうことが社会的養護の重要な役割。安心できる暮らしや健全な人間関係の形成を通して、子どもが自分の将来に希望を持てるよう支援を行うことが大切なのです。

本学では、制度や施設などの学びはもちろん、社会的養護が必要な子どもの実態を理解するため、里親家庭や施設で育った人を招いて実体験を語ってもらっています。特に学生と同年代の方から多く話を聞くことで、学生がより身近な話として感じられるよう取り組んでいます。また、児童養護施設などで実習を行い、現場職員の役割や子どもにとっての適切な養育環境の大切さを学びます。

施設実習の様子。子どもたちのリアルな実状を知ることができる

今の日本は、社会的養護のもとで育った子どもにとって厳しい世の中です。例えば保証人がいないために「奨学金を利用できない」「住む家を借りられない」と、生活するうえでの選択肢が限定される子どもは大勢います。この問題の解決には子ども家庭福祉の現場だけでなく、地域や企業、社会全体が社会的養護への理解を深め、様々な角度から支援を行うことが必要です。このような複雑な社会課題に取り組んだ本学の学生は、一般企業や組織に属しても、その主体性や多角的な思考を活かし、様々な形で社会に改革をもたらすことができるのではないでしょうか。

伊藤嘉余子(いとう・かよこ)氏  福島学院大学専任講師、埼玉大学教育学部准教授などを経て、2017年より大阪府立大学地域保健学域教育福祉学類教授を務める。社会福祉士、保育士資格を所有し、社会福祉や児童福祉に関わる様々な法人団体でも活躍している。専門は「社会的養護」。研究テーマの「子ども家庭福祉学」は、すべての子どもたちと、その家族の幸せを追求する学問。保育全般や子育て支援、障害児福祉などの専門分野があり、中でも「社会的養護」は、多様な原因で生みの親と暮らせない子どもたちへの福祉がテーマの分野となっている。学生に薦める人生に役立つ本は「社会的養護の子どもと措置変更 養育の質とパーマネンシー保障から考える」

【PR】提供:リクルートマーケティングパートナーズ

スタディサプリ 大学の約束2019-2020

全国の大学48校の独自の取り組みと、育成方針についてレポート。学界、産業界の有識者・著名人インタビューも掲載し、さまざまな角度から「将来活躍する人材の育成と活用」について情報をお届けします。
出版 : リクルート
価格 : 463円+税

学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
大学の約束