携帯電話事業を取り巻く環境が変化している。総務省は2019年6月に発表した改正電気通信事業法の省令案で、“2年縛り”の違約金を1000円までに、通信契約継続を条件としない端末割引を2万円までに下げることを提案。5Gの開始、楽天の参入も待ち受ける。特集の3回目では、業界2位のKDDIの動向を探った。

KDDIは2018年に、田中孝司氏(左)から高橋誠氏(右)に社長が交代。高橋氏の新体制による新しい戦略を進めている最中だ
KDDIは2018年に、田中孝司氏(左)から高橋誠氏(右)に社長が交代。高橋氏の新体制による新しい戦略を進めている最中だ

 携帯電話事業で国内2位のシェアを獲得しているKDDI。大きく変化する市場環境に対応すべく、18年4月に就任した高橋誠社長の下、通信事業だけでなく多方面に事業を展開しようとしている。

通信を軸にライフデザイン領域を拡大

 19年に発表した新たな中期経営計画の中で、KDDIが主力のコンシューマー向けサービス事業の戦略として掲げているのが「通信とライフデザインの融合」である。これは16年に打ち出した「auライフデザイン戦略」の延長線上にあるもの。通信を核に据え、その上で生活に関わるサービスを顧客に提供して、auのサービスの付加価値を向上させる。それによって、売り上げを拡大するとともに、個々の顧客とのエンゲージメントを高めて、解約率の低減につなげようという考えだ。

高橋社長の体制となったKDDIは、通信事業の顧客に対し、各種の生活系サービスを提供して事業を拡大していく「通信とライフデザインの融合」に力を入れている
高橋社長の体制となったKDDIは、通信事業の顧客に対し、各種の生活系サービスを提供して事業を拡大していく「通信とライフデザインの融合」に力を入れている

 通信とライフデザインの融合を進める上で、KDDIが重視している取り組みが2つある。1つが、EC事業の「au Wowma!(ワウマ)」だ。16年にディー・エヌ・エーからEC事業を買収してリブランド。携帯電話料金と併せて払える「auかんたん決済」やauのサービス利用に応じてたまる「au WALLETポイント」と連携させるなど、auユーザーがより利用しやすい環境を整えて、利用拡大を促している。

 もう1つが金融・決済事業だ。KDDIはこれまでにも、プリペイドカードを用いた独自の決済サービス「au WALLET」、三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)と設立した「じぶん銀行」(20年2月に「auじぶん銀行」に商号変更予定)など、多くの金融・決済事業を展開してきた。

 19年2月には「スマートマネー構想」を打ち出し、金融事業をさらに推進。傘下の金融関連事業をまとめる中間持ち株会社「auフィナンシャルホールディングス」を設立し、グループの金融事業を「au」ブランドに統一する方針を発表した。さらにカブドットコム証券の株式をTOBで取得。名称を「auカブコム証券」に変更して展開する予定もある。

KDDIグループ内の金融事業をauブランドに統一した。*現・カブドットコム証券。2019年度中に商号変更の予定
KDDIグループ内の金融事業をauブランドに統一した。*現・カブドットコム証券。2019年度中に商号変更の予定

 このように、スマートフォンとau WALLETを軸に、決済や保険、投資といった様々な金融サービスを提供し、それらをポイントなどで相互に連携させることで、顧客により多くのサービスを利用してもらおうとしている。そうして、顧客のエンゲージメントを高め、顧客基盤を強化する狙いがあるわけだ。

KDDIは金融・決済サービスを取りまとめる「auフィナンシャルホールディングス」を設立。傘下の金融サービスをauブランドに統一するなどして強化を図っている
KDDIは金融・決済サービスを取りまとめる「auフィナンシャルホールディングス」を設立。傘下の金融サービスをauブランドに統一するなどして強化を図っている

他社に遅れてIDをキャリアフリー化

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