3500円のかまぼこも 通が選ぶ「魚の練り物」トップ10
おでんや正月のおせちで重宝する魚の練り製品。かまぼこやちくわなど、全国に数多くある商品の中にはぜいたくな味わいを売り物にするものもある。年末年始の手土産にも喜ばれそうな一品を、試食をして専門家に選んでもらった。
鈴廣は1865年(慶応元年)創業の老舗かまぼこ店。「古今」はオキギスやグチなどの白身魚を使い、職人が一つひとつ手作りしている。日によって使う魚の大きさなどが違うため、職人がかまぼこの弾力を左右する塩加減や温度、水分量などを調整し、魚本来のうま味を引き出しながら板につけて蒸し上げる。食感はしなやかながら、プリッとした強い弾力がある。濃厚な魚のうま味が口の中に溶け出す。
「魚をそのまま食べるより、練り物にしたからこその深い味わいがある。練り物の王様」(藤原浩さん)、「魚の風味をいかしている」(石内幸典さん)、「甘味があり、弾力もよく、いくつでも食べたくなる王道の味」(aiko*さん)。
(1)1本3500円(2)0120・14・1147 www.kamaboko.com/
新鮮なサメを生のまま産地から仕入れ、一番肉と呼ばれる最もおいしい部分を使う。山芋や卵白を加え石臼で練り、たっぷりと気泡を抱かせる。裏ごしを繰り返すことで、きめ細かで滑らかな仕上がりにした。口に入れるとじゅわっと溶け、魚のうま味が広がる。おでんに入れるなら軽く温める程度で。軽くあぶってショウガじょうゆと合わせてもおいしい。
「濃厚なうま味ときめ細かな食感。職人の技と素材の良さが伝わってくる」(高橋修一さん)、「ふわふわと上品な食感。おでんにして食べたい」(小石原はるかさん)。
(1)1枚410円、6枚セット2457円(2)0120・24・3987 www.hanpen.co.jp/
大阪名物の魚の練り天。ハモを使った白くてふんわりとした生地に、京野菜の代表格「九条ねぎ」を混ぜ合わせ、まるめて、低温の油で揚げている。オーブンでこんがり焼き目を付けると、ご飯のおかずになる。季節の野菜と炊き合わせるなど、幅広い調理法で楽しめる。大阪の地場野菜「難波ねぎ」を具にしたものや、サツマイモなど季節の野菜を使ったものもある。
「ネギの香りが良く、シャキシャキとした食感も楽しめる」(新井由己さん)、「ネギの風味が良く、親しみやすい味。鍋やおでん、おやつとしても活躍しそう」(マッキー牧元さん)。
(1)3枚入り693円(2)06・6641・3451 www.daitora.co.jp/
原料の魚は長崎の近海でとれたタイ。新鮮なタイを、明治時代から伝わる独自の技術でのどごし良い食感に練り上げている。昔から「めでたい魚」といわれているタイ100%のかまぼこなので、お正月の手みやげなどにも重宝されている。
「タイの香り、品の良い甘さ、滑らかなのどごしすべてが申し分ない。本わさびと日本酒で楽しみたい」(町田えり子さん)、「魚の風味が口に広がる深い味わい」(畔田隆弘さん)、「タイのみというこだわりが生み出したぜいたくな味。ハレの日に食べたい」(藤原さん)。
(1)1本2625円(2)075・321・7700 www.ibarakiya.co.jp/
宇和島の近海のホタルジャコなどの小魚を使う。1匹ずつ包丁で頭と内臓を取り除き、すりつぶし、きねと石臼で練り上げる。手作業で木枠に押し込んで成形し、高温の油で揚げる。ジャコのうま味が程よく、カリカリとした小骨の食感をあえて残している。「魚の味わいが引き立っている。うどんに入れたらおいしそう」(根笹卓也さん)
(1)10枚入り1785円(2)0895・24・0215 www.tanakama.co.jp/
海産物を乗せたかまぼこ3本セット。真っ白であっさりとしたかまぼこの上に、ズワイガニや利尻産の蒸しウニ、北洋産の紅サケの切り身をそれぞれ乗せている。切って皿に盛りつけるだけで、食卓が華やかになる。北海道の土産としても人気。「特にカニのかまぼこの完成度が高い。風味が良いカニ肉が口中でほどける。一品料理にも、酒のさかなにもピッタリ」(藤原さん)
(1)3本セット5670円(各1本1890円)(2)www.kamaei.co.jp/
新鮮なタラやキンキなど白身の魚に、塩や酒などをあわせて笹(ささ)の形に成形し、ふんわりと焼き上げる。冷たいままでもおいしいが、温めると表面がよりふっくらとし、魚のうま味が濃厚になる。「大きく、分厚く、ふんわりとした伝統的な石巻の笹かまぼこ」(石内さん)
(1)1枚179円、1箱10枚入り1911円(2)0120・20・1842 www.shiraken.co.jp/
長崎でとれるハモ、エソ、グチなどのすり身に塩、酒、卵白を入れて練り上げ、淡い山吹色に焼き上げた。つなぎのでんぷんや砂糖を加えないため、かみしめるほど、魚本来のやさしい甘みが口中に広がる。「しっかりした弾力と歯応え。そのまま食べたい」(aiko*さん)
(1)665円(2)095・824・4561
軟らかくゆでたゴボウと魚のすり身を、エソ、グチなどの魚皮で包み、手作業で2時間ほどかけてこんがり焼き上げ、甘いタレに漬け込んだ。ゴボウは適度にタレが染み込み甘辛い。「魚皮は香り高く、深い甘みのタレとゴボウの相性が抜群。滋味あふれるおいしさ」(町田さん)
(1)1本840円(2)0739・22・5204 www.tanaume.jp/
タラやグチなどの魚のすり身に豆腐を合わせ、伊勢ヒジキ、キクラゲ、タケノコやウズラの卵など9種類の具を入れて揚げている。大きさは子どものこぶしほど。「具材たっぷりで食べ応えがある。見た目も豪華」(新井さん)
(1)1個315円(2)0120・23・1721 www.wakamatsuya.co.jp/
■こだわり、素材選びから
かまぼこなどの練り製品の歴史は古く、平安時代の文献にも登場する。水産資源を主なたんぱく源としてきた日本で独自に発展した魚の練り製品は、その種類も豊富だ。魚の頭や内臓などを取り除き、すり身にしたものをよく練った後、蒸す、焼く、揚げる、ゆでるなどの方法でかまぼこやちくわ、さつま揚げ、はんぺんなど様々な製品になる。
練り製品の独特の弾力は、魚のすり身に塩を加え、その時にしみ出すたんぱく質の繊維が絡み合って生まれる。「魚の選別やすり身を練る、加熱するといった技術によって、製品のうま味や弾力も変わってくる」(全国かまぼこ連合会の石内幸典さん)
ランキングに並んだ商品を見ると、1位の「超特選蒲鉾(かまぼこ) 古今(ここん)」はグチやオキギス、2位の「手取り半ぺん」はサメ、3位の「九条ねぎ天」はハモ、4位の「鯛魚羹(たいぎょかん)」はタイというふうに、製造元はそれぞれの製品に合う原料を選び、独自の作り方で丁寧に仕上げている。
最近の魚の練り製品は「総菜タイプのものが増えている」(おでん研究家の新井由己さん)のも特徴だ。3位の「九条ねぎ天」、9位の「ごぼう巻」、10位の「伊勢ひりょうず」は野菜も一緒に練り込んでいる。切ったり、少しあぶったりするだけでご飯のおかずとして味わえる。
かまぼこなどは高たんぱくなうえ、魚の骨のカルシウム分が多く含まれ、脂肪分が少ないことから「ヘルシーで手軽な食品として見直されている」(料理研究家の町田えり子さん)という。ただ、しょうゆをたくさんつけるなど塩分の取りすぎには注意が必要だ。
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表の見方 カッコ内は本社・本店の所在地。数字は選者の評価を点数化。(1)価格(送料別)(2)取り寄せ先の電話番号やホームページ(頭のhttp://は省略) 記事中のリンクは掲載時のものです
調査の方法 大手百貨店もしくは取り寄せて購入できるちくわ、かまぼこ、はんぺんなど魚の練り製品を対象とした。大手百貨店の売れ筋、専門家の推薦などにより22商品を候補に選出。実際に試食して選んでもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
aiko*(お取り寄せ生活研究家)▽新井由己(おでん研究家)▽石内幸典(全国かまぼこ連合会総務課長)▽畔田隆弘(三越伊勢丹銀座店食品営業部マネージャー)▽小石原はるか(フリーライター)▽高橋修一(東急百貨店食品統括部グルメパントリー担当課長)▽根笹卓也(グランドハイアット東京副総料理長和食統括)▽藤原浩(フードアナリスト協会常任理事)▽町田えり子(料理研究家)▽マッキー牧元(『味の手帖』編集顧問)
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