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知らないと大変!ビジネス法則

念押しこそ逆効果 部下に反発される上司の悪手 第40回 心理的リアクタンス

2019/9/4

■せっかく今やろうと思ったのに……

ビジネスシーンに目を転じて、心理的リアクタンスとの付き合い方を考えてみましょう。

たとえば、書店のビジネス書の棚をのぞけば、営業の極意を説く本が山のようにあります。内容でほぼ共通しているのは、「話し上手」ではなく「聞き上手」を勧めていることです。

下手な営業は、一所懸命に商品や提案を説明し、顧客を説得しようとします。売り込めば売り込むほど、心理的リアクタンスを生み、買う気を削いでいることも知らずに。

対する有能な営業は、顧客の不満や不安を受け止めながら、自分で考えられるように思考のプロセスをアシストします。そうやって、顧客が自分で答えを見つけ、自分自身を説得するようにもっていくわけです。

部下に接するときも同じことが起こります。

上司から、「絶対に3時までだぞ」「本当に間に合うのか」「遅れは許されないぞ」と何度も念押しされると、部下はどんな気持ちになるでしょうか。わざと「やってみないと間に合うかどうか……」と返事をはぐらかし、期限ギリギリに仕上げたくなります。勉強しようと思ったときに、親から「勉強しろ」と言われてやる気がなくなる、あのパターンです。

心理的リアクタンスを避けたければ、「何時までならできる?」「もう少し早められない?」と尋ねて、自分で決めてもらうようにします。上から目線にならないように気をつけながら。

■知らず知らずに北風を吹きつけていないか

誰かと意見がぶつかるときも、考え方はまったく同じです。

私たちは、どうしても自分の正しさを主張して、相手を説得しようとします。しかも、意見の元になる信念や価値観など、相手が大切にしているものを否定しようとしてしまいます。「その考えはおかしい」「そんなことを言っているからダメなんだ」と。

ところが、そう言われて相手の考えを素直に受け入れる人なんていません。それどころか、大きな心理的リアクタンスを生み、「絶対に譲らないぞ」と、さらに自分の考えに執着するようになります。相手に対する敵意も高まり、逆効果になるだけです。

そうではなく、相手の信念や価値観を一旦は受け入れてみましょう。「同意はできないけど分かるよ」「そういう風にも考えられるね」「それはそれでもっともな話だと思うよ」と。

そうすれば、いらぬ抵抗を生まずにすみます。「分かってくれるなら、原則は変えないけど、この程度なら譲ってもいいよ」と、相手も融通が効かせやすくなります。北風ではなく、太陽が旅人のマントを脱がすことに成功するのです。

こんな風に、私たちは知らず知らずのうちに、相手に心理的リアクタンスを生じさせていることがあります。ときには、不用意な発言や高飛車な態度によって、まったく意図しないうちに。

もし、あなたに反発している人がいたら、相手が悪いのではなく、自分の振る舞いに原因があるのかもしれません。関係改善に向けて、自分ができることを探してみてはいかがでしょうか。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

堀 公俊氏・組織コンサルタントが講師を務めるスキルアップ講座/日経ビジネススクール

組織変革、業務改善に欠かせないワークショップの成果を引き出すファシリテーション能力、問題解決のフレームワーク思考力を高める

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