夏休みの宿題も仕事も達成困難 最悪招く計画錯誤とは第38回 計画錯誤

都合の悪いことは自分には起こらない

なぜ、こんなにも見通しの甘い計画を立ててしまうのでしょうか。原因ははっきりとは解明されていませんが、このような理由づけがされています。

そもそも私たちは、良いことが起こる可能性を過大に評価して、悪いことが起こる可能性を過小に評価する傾向があります。そうすれば、心理的なストレスが減らせるからです。

これを「楽観性バイアス」と呼びます。早い話、都合の悪いことは、自分には起こらないと思ってしまうわけです。あるいは、「何とかなるだろう」「考えても仕方がない」と思って、深く検討しようとしないのです。これでは甘い計画になるのは当然です。

それに、予想をするときに、一番の手掛かりとするのが過去の実績です。卒業論文の話で言えば、ここまでにどれくらいの時間を要して、どれくらい大変だったか、です。

ところが、その記憶を忘れてしまったり、都合よく記憶したりするから、たちが悪い。いわゆる、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」です。専門的には「記憶バイアス」と言います。参照するデータがいい加減であれば、適切な見積りができるわけがありません。

加えて、正しく予想するには、タスクを細かく分けて時間を算出し、相互のタスクのつながりも考えなければいけません。かなり手間のかかる作業になり、大きな負荷がかかります。

つい面倒臭くなって、全体をアバウトに「まあ、こんなもんだろう」といい加減に見積もってしまいます。結果、大きくはずしてしてしまうのです。

あらかじめバイアスを見込んでおく

原因さえわかれば、計画錯誤から逃れる道は難しくありません。バイアスが働かないよう、悲観的、合理的、精緻に計画を立てることです。予想外の出来事に対応するバッファ(余裕)をしっかり見込んだ、確実にやり遂げられる計画を。

ただ、それを立てるのはかなり大変です。あらゆる事態を想定して、対応する時間や労力を見積もらないといけませんので。だったら、こういう簡便法はどうでしょうか。

バイアスが働いていることを前提にして、過去の実績から「当初の予想のN倍かかる」ことを覚悟しておくのです。それで、割に合うかどうか、仕事を受けるかどうか、他の仕事とどうやりくりするか、などを判断するようにします。実際に私は、係数を2倍にして執筆のスケジュールを組んで、仕事の穴を開けないように心がけています。

ところが、こんな話をすると、「そんな余裕タップリの計画なんて立てられない」という声を耳にします。「無理な計画を何とかするのが仕事」という意見も分からないではないです。

だったら、遅れることは承知で、やりながらバッファをつくるしかありません。たとえば、本日やるべきことがすべて片づいたときに、打ち留めにしたのでは余裕は生まれません。調子がよければ、そのまま明日の分に手をつけるようにします。家のローンで言うところの「繰り上げ返済」です。うまくいくかどうか、来年の夏休みにお子さんを実験材料にしてみてはどうでしょうか。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

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