働き方・学び方

仕事人秘録セレクション

100年先を見越して原酒づくり 後継者も「熟成」 サントリースピリッツ 名誉チーフブレンダー 輿水精一氏(10)終

2019/8/2

山崎蒸溜所の貯蔵庫で

サントリースピリッツの名誉チーフブレンダー、輿水精一氏の「仕事人秘録」。最終回の第10回では将来に向けた仕込みや、後継ブレンダーの育成について語ります。

◇  ◇  ◇

――良質な原酒を将来に残していくことも、ブレンダーの大切な仕事だ。

10年先に嗜好(しこう)のトレンドがどうなっているかは分からない。だからこそ変化に富んだ原酒を仕込んでおく必要がある。多様性を増すのと同時に、従来以上にコクのある味わい深い原酒をつくっておきたい。ウイスキーの品質も高まるし、提供できる商品の幅もぐっと広がる。

しかし、それは難しい作業だ。技術面では限界に近いかもしれないが、何としてもつくりたいという気持ちで取り組まなければ進歩しない。ブレンダーは最終製品をつくるという意味で目立つ存在かもしれないが、原酒が良くなければそれを超えるウイスキーはできないのだから、生産にかかわる全員の力が頼りだ。

ひとつのカギは樽(たる)にあるだろう。先輩のブレンダーが「神社仏閣の香りがする」と表現した原酒がある。国産のミズナラ材の樽で生まれた原酒で、日本ならではのウイスキーづくりに欠かせない存在になっている。梅酒を寝かせた樽で原酒の熟成を試みるなど、独創性のあるものを残そうと知恵を絞っている。

乗り越えるべき課題も多い。ミズナラで樽を作るには、樹齢200年以上でまっすぐに伸びていなければならず、そういう木は北海道と青森県の一部くらいにしかない。もっと新樽を用意したいが、資源の枯渇も防がなければならない。ウイスキーづくりは50年、100年と長期にわたる事業。将来を見つめて工夫を重ね、引き継いでいくのだ。

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