隣の人も自分と同じ…ではまるワナ 組織の常識の誤解第37回 フォールス・コンセンサス効果

フォールス・コンセンサス効果は、親しい間柄になればなるほど強くなると言われています。近しい人なら、考え方、価値観、習慣、ルールも同じだと勝手に決めつけてしまうのです。

大盛り上がりの鉄板アイスブレイク

フォールス・コンセンサスは簡単に味わうことができます。私が大人数のワークショップでよくやるアイスブレイク(心と体の緊張をほぐすエクササイズ)があります。「もし目玉焼きに調味料をかけるとしたら、何にしますか?」と尋ねるものです。

「会場の右前が塩(胡椒)、左前が醤油、右後がソース、左後がマヨネーズ、それ以外は中央に」と、四隅に分かれてもらいます。その後で、集まった者同士で話をしてもらったり、それぞれの主張を語ってもらったりします。会場が大盛り上がりになる、すべらないアイスブレイクの一つです。

感想を尋ねると必ず出てくる話があります。「当然、塩をかけるものだと思っていた」「醤油やソースをかける人がいてビックリした」というやつです。みんな、自分が当たり前だと思っているわけです。他の人もそうするに違いないと勝手に思い込んでいるのです。

ちなみに、中央に集まるのは、ケチャップかドレッシングが多く、焼き肉(または餃子)のタレや七味トウガラシという意見もありました。ホント、人の好みは千差万別ですね。

私が毎週欠かさず見ているTV番組「秘密のケンミンSHOW」(日本テレビ系)でも同じようなシーンに遭遇します。一般県民にご当地ならではの食べ物を街頭インタビューした後、締めくくりに「それを食べているのは○○県民だけだとご存じですか?」と尋ねるのが定番となっています。

すると異口同音に「え!」「うそ~」と驚いてのけぞります。やはり、暗黙のうちに、日本中がそうに違いないと思いこんでいるわけです。

会社の常識は世間の非常識?

話をビジネスに戻します。個人の失敗ならまだしも、会社の意思決定にこの効果が働くと目も当てられません。自社の論理を当然視して、「売れると思っていた商品が」「信頼していた協業先が」「成功するはずの事業が」となってしまいます。まさに「会社の常識は世間の非常識」です。

では、フォールス・コンセンサス効果をなくすにはどうしたらよいでしょうか。

理想的なのは、自分の考えが世間一般と同じであると信じ込まず、しっかりと確認や検証を(できれば定量的に)することです。でも、忙しいのに一々そんなことはやっていられません。ある程度は「自分(自社)と世間はズレていない」という前提をおかないと、仕事が膨大になってしまいます。たとえば、本コラムが安心して書けるのも、この前提があるからこそです。

せめてできるのは、「フォールス・コンセンサス可能性が働いているかもしれない」という可能性に対して心を開いておくことです。悪いのは、信じ込んで1ミリも疑わないことであり、「少数派かも」「非常識かも」という恐れを頭の片隅においておけばよいのです。

データまで集めなくても、常識か非常識かは何人かに尋ねてみれば分かるはず。私の失敗も、自分を疑う心さえあれば、「資料って、こんな感じでいいのですか?」「こんな話を言うのは私だけかもしれませんが、一言いいですか?」と言えたはずです。

「自分は少数派かもしれない」とは誰も思いたくありません。しかしながら、少数派がいないと世の中うまく回りません。勇気を持って、フォールス・コンセンサスに立ち向かいましょう。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

堀 公俊氏・組織コンサルタントが講師を務めるスキルアップ講座/日経ビジネススクール

組織変革、業務改善に欠かせないワークショップの成果を引き出すファシリテーション能力、問題解決のフレームワーク思考力を高める

>> 講座一覧はこちら


ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧