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職場の知恵

2012/10/30

職場の知恵

日本企業も複線型キャリアの導入を

 まったく同感です。たとえば、ボストン・レッドソックスとか、ヤンキースなどは20代のGMを起用するケースもあります。一方、日本では、少し前に巨人が星野仙一さんを監督にしようとしたら、OBが反対したというんですね。その理由が、「星野さんは中日出身だから、監督ポストを巨人OB以外に流出させるな」ということだったらしいんです。過去に功績があった人間が監督に就いて、ヘッドコーチその他もOBから選ぶのがあるべき姿であると。それで話が流れてしまった。これが日本の体質ですよ。マネジャーが機能ではなくて名誉職になっているんです。

いろいろな中小企業の経営者の方に、「日産の最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーンさんは、ルノーに新人として入って、ほどなく工場長になった」という話をします。すると、「そんなよそからきたわけのわからないやつにポストをやったら、社内秩序が崩壊してしまうだろう」とおっしゃる。

それに対しては、「20代であっても、あるいは社外からスカウトしてきた人であっても、優秀だという見込みがあれば、まずは役職を任せてみてはどうですか」と提案しています。それでも、「それはわかった。ただし、いきなり大金を払うわけにはいかないだろう」という話になってしまうんです。

多くの日本企業では、社内の序列に比例して報酬が上がるという単線のキャリア制度しかありません。だから現場で結果を出せる人であれば、マネジャーでなくても高い報酬を出せるような複線型キャリアとするような組織改革をすれば、組織に多様性が生まれます。

会社を変えるにはまずトップから

岩瀬 アメリカだって、IBMについての昔の文献などを読むと、従業員みんなで朝は体操したりしていて、日本と一緒なんですよ。社員がロイヤリティー(忠誠心)を尽くしたり、福利厚生を充実させたり。これまでの日本企業のやり方も、大きな集団を1つの決まった方向へ動かしていくためとしては間違っていなかったわけですから、一概に否定するつもりはありません。

経営者の気持ちとしては、やはり社員に長く会社にいてほしいし、長くいてくれる人に報いたい気持ちもあります。ただし理屈の上では、報酬は在籍年数ではなくて、果たしている機能、仕事に対して支払われるものです。長く会社にいても、同じ仕事しかしていないのであれば、本来給料は上がらないはずですから。現在のように、同じことをより良くやることではなくて、既存のものを壊し新しいものを生み出すことが求められる時代において、これまでの会社のやり方は変えなければいけないと思いますね。

そして会社を変えるには、トップが変わらなければいけない。社長がサラリーマンの「あがりのポジション」である限りにおいては会社は絶対変わりません。では、なぜトップが変われないかというと、日本の経営者は、資本市場からのプレッシャーにさらされていないからなんですよね。社長にとって頭が上がらない存在っていうと、会長や顧問といった人たちだけになってしまう。実力あるトップ、成果を出せるトップを株主が選べるようになれば、会社全体が変わる。

終身雇用は「社会保障の民営化」

 でも僕は、日本の会社も変わりつつあると思っています。資本市場も変わって、会社同士の株式の持ち合いも崩れてきていますしね。僕の場合、変わらなきゃいけないのは国民の意識だと思うんです。ほかの国より40年くらい遅れている。

たとえば、今でも階級闘争の思考をする人がいる。「法人税を下げなければ」と言うと、「会社を肥え太らせてどうするんだ」という反論がくる。会社が太ったとしても、そのぶんは株主か従業員にいくだけなんですが。突き詰めていくと、会社という共同体が、従業員すべての面倒を見るべきだという考え方なんです。終身雇用なんて「社会保障の民営化」でしかありません。困っている人は、国が面倒を見るべきなんです。その上で、国がどこまで面倒を見るか、つまり大きな政府か、小さな政府かという議論をすべきでしょう。

それなのに、企業がきちんと従業員の面倒を見るべきだという議論で止まっちゃっている。そうなると政治も動きにくいし、企業の側も、たとえば金融機関が企業に対して「もっとリストラしろ」とも言いづらくなる。労働組合はもちろん頑固になる。だから国民の意識が変わるのがいちばんのキーかなという気がしていますね。

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