ここ数カ月、ドラッグストア大手のココカラファインを巡るマツモトキヨシとスギ薬局の激しい争奪戦が話題を呼んでいる。背景にあるのは、スーパーやコンビニの市場を侵食し、地方で勢力拡大を続けるメガドラッグチェーンの首都圏攻勢だ。激変するドラッグストア業界の実力と将来性を、5回にわたって特集する。

 ここ数年、小売りにおけるドラッグストアの伸長が著しい。地方ではロードサイドに大型店が続々と出店。医薬品や化粧品、日用品だけでなく加工食品や生鮮食品まで取り扱うチェーンも現れた。その結果、食品スーパーの需要など取り込み、ドラッグストアは業界全体で年商7兆円規模まで成長。24時間営業にも取り組み始めるなど、コンビニエンスストアの市場をも侵食し始めている。小売りの中では勝ち組と言えるが、一方でドラッグストア同士は熾烈な競争が行われている。そんな中、業界を震撼させる巨大再編が表面化した。

かつての盟主マツキヨがM&Aに名乗り

 2019年4月下旬、マツモトキヨシホールディングス(以下、マツキヨ)がココカラファインに対して資本業務提携を打診。すると19年6月初旬に、今度は「スギ薬局」を運営するスギホールディングスがさらに踏み込んだ経営統合を検討すると発表した。マツキヨも経営統合を選択肢に加えて対抗。2社からラブコールを受けた形のココカラは、7月末をめどに“結婚相手”を選ぶという。

 JPモルガン証券のシニアアナリスト・村田大郎氏は、「どちらと統合してもメリットは大きい」と話す。ココカラとマツキヨは同じ首都圏を地盤とし、どちらも駅前立地が中心。一緒になれば、首都圏で圧倒的な強さが得られる。加えて、「価格訴求ではなく、HBC(ヘルス&ビューティーケア=医薬品や化粧品カテゴリー)での専門性を強化するという方向性も似ている」(村田氏)。一方のスギは中部地方を地盤とし、ココカラとは補完関係にある。またスギは調剤薬局を強みとしており、同じく調剤を強化しようとしているココカラにとってはプラスだ。

 逆にマツキヨ、スギ両社にとっては、ココカラを相手に奪われるのは死活問題。仮にマツキヨがココカラと一緒になれば、関西で店舗数が500店舗を超え、約400店舗のスギを上回る。関西地方への出店を強化してきたスギにとっては大きな痛手となる。逆にスギがココカラと一緒になれば首都圏で700店舗弱と、マツキヨの大きなライバルになる。加えて東海・北陸や関西ではスギ・ココカラ連合が圧倒的に強くなり、マツキヨの劣勢は明らかだ。

赤い数字がライバルを上回る店舗数となる組み合わせ。マツキヨ・ココカラ連合は首都圏と関西が強く、スギ・ココカラ連合は東海・北陸と関西に強い(JPモルガンの資料を基に編集部作成)
赤い数字がライバルを上回る店舗数となる組み合わせ。マツキヨ・ココカラ連合は首都圏と関西が強く、スギ・ココカラ連合は東海・北陸と関西に強い(JPモルガンの資料を基に編集部作成)

 そもそも、なぜ20年以上もの長い間業界の盟主だったマツキヨが、他社との提携に踏み出したのか。

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