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外資の退職勧奨は冷淡か 飼い殺さず人を生かす発想も 『外資の流儀 生き残る会社の秘密』

2019/7/29

今年の夏のボーナスはいかほどだっただろうか。トータルで年収と同額の賞与――そんな、一般的なビジネスパーソンがまずお目にかからないようなボーナスも、外資企業では夢ではないそうだ。本書『外資の流儀 生き残る会社の秘密』の著者も、日本マクドナルドで働いていた頃、そんな高額賞与を目の当たりにしたという。

高額賞与が実現するのは外資が徹底して生産性を高める組織づくりを行っているからだ。そんな外資系企業の経営システムを解説しつつ、効率化と生産性向上のための仕事の進め方や手法、すなわち“流儀”をまとめたのが本書。米国企業の半分以下の生産性しかない日本企業が生き残るには、外資型の組織への変革が必要だと説く。著者の中澤一雄氏はマクドナルドを始め日本ケンタッキー・フライド・チキン、ウォルト・ディズニー・ジャパンなどで長年活躍してきた人物である。

■高い生産性を支える「勝利の方程式」

なぜ米国企業が高い生産性を保ち続け、世界で存在感を示しているのか。著者はその理由を探り、8つの経営エッセンスを見出したという。著者が「勝利の方程式」と呼ぶその外資流経営エッセンスの組み合わせこそ、日本企業の生産性を高める鍵なのだ。

例えば外資では、職位別に職務内容や職務の領域が明確だ。マネジャーであれば30億円、課長ならば50億円、部長ならば100億円の売り上げと、ジョブサイズ(仕事の範囲)が決まっている。達成できなければそのポジションから脱落し、代わりの人材がその職位に就く。達成できればより大きなジョブサイズを担い、収入も比例して増えるという明快な仕組みだ。

このように外資は徹底したペイ・フォー・パフォーマンス(働きに応じた給与)。一方、日本企業は職位がやけに多く、階層の多さは外資の2倍近くもあるという。だが職務内容と仕事の領域が明確でない場合が多いため、生産性が一向に上がらないのだと著者は指摘している。

■退職勧奨が「飼い殺し」の弊害防ぐ

さらに外資の特徴として、人材への考え方が日本とは大きく異なる。外資では生産性に問題が出た場合、その社員に対して降格、退職金の上積みや再就職支援とともにすみやかな退職勧奨を行うそうだ。新天地での活躍の可能性があるうちに場所を選ばせることが、会社にとっても、その社員にとっても有益だと考えるためだ。

日本企業は、人事部長が退職勧奨の権限を持っていない場合があり、生産性が低い社員を抱え込んでしまう一因になっている、と著者は述べる。飼い殺しでモチベーションが低下した窓際社員は、日本企業の慣行が生んだいわば犠牲者だともいう。

著者自身も育てた部下に対して再就職支援を行ったことがあるそうだ。門戸が開かれているうちにその人が生きる場を与え続ける方が、真に人を大切にしているという見方もできよう。外資に興味がある人にもそうでない人にも、ピリリと刺激になる一冊だ。

今回の評者=はらすぐる
情報工場エディター。地方大学の経営企画部門で事務職として働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」エディターとして活動。香川県出身。

外資の流儀 生き残る会社の秘密 (講談社現代新書)

著者 : 中澤 一雄
出版 : 講談社
価格 : 950円 (税込み)

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