9月には国内でも5Gのプレサービスが始まる。カウントダウンが近づく中、通信各社は5Gの新たな用途を生み出すための取り組みを強化している。KDDIの高橋誠社長は、5GにIoTなど新技術を組み合わせたサービスが発展することで、サブスクを超えたリカーリング型サービスが広がると展望する。

KDDIは5Gが広がることで、IoTやAIのサービスが発展し、定期的な収益を得るリカーリング型ビジネスが広がると見る。写真はKDDI子会社のソラコム(東京・世田谷)が手掛ける明太子(めんたいこ)の自動配送サービス「ふくやIoT」のイメージ図
KDDIは5Gが広がることで、IoTやAIのサービスが発展し、定期的な収益を得るリカーリング型ビジネスが広がると見る。写真はKDDI子会社のソラコム(東京・世田谷)が手掛ける明太子(めんたいこ)の自動配送サービス「ふくやIoT」のイメージ図

 従来比10~20倍もの高速大容量、さらに低遅延で多接続。それでも新たな用途を生み出せなければ、単に通信が速くなるだけ。通信事業者各社は、5Gを生かす用途創出に大きな力を注いでいる。「5GとかIoT、ビッグデータなどの技術だけを多く語る人は信じてはいけないと思っている」。ステージに立つ高橋社長の発言には、5Gを通じて新たなビジネスを創造し、実現できなければ意味がないという思いがにじむ。

 KDDIは、同社の5Gへの取り組みをアピールする「KDDI 5G SUMMIT 2019」を2019年6月27日に開催した。基調講演でKDDI社長の高橋誠氏は、自らが社長就任以前から長年取り組んできた「オープンイノベーション」や「リカーリング」といった5G時代のキーワードを掲げた。リカーリングとは「循環」を表す言葉。販売後に顧客から継続的に料金を獲得する収益化モデルのことだ。5G通信やIoTを活用し、食品の利用量に応じた料金を請求するなど、従来のサブスクリプション型サービスを超える利便性を提供できるという。

「KDDI 5G SUMMIT 2019」で登壇したKDDI社長の高橋誠氏
「KDDI 5G SUMMIT 2019」で登壇したKDDI社長の高橋誠氏

5GはDXを加速させるインフラに

 高橋氏は、5Gについてまず「デバイスが新しくなるだけではなく、5Gが社会の新しいインフラになる」と説明する。さらに5Gがデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させることに加え「技術を目的とするのではなく、何のために技術を使うかが重要になる」と5Gの位置付けを語った。

 続いて5Gのサービス展開に向けた進捗状況に触れた。総務省による19年4月の周波数割り当てでは、低い周波数帯の「サブ6」で100MHz幅の帯域を2つ、高い周波数帯の28GHz帯で400MHz幅の帯域を1つ、割り当てられた。NTTドコモとともにサブ6帯で2つの帯域を得られたことについて、「アグレッシブな提案をした2社に、2つの帯域が割り当てられた。KDDIは頑張った」と胸を張った。

 KDDIは、20年3月に5Gの本格サービスを開始する。それに先立つ19年秋のラグビーワールドカップの開催時点でプレサービスを提供する計画を改めて説明した。対応エリアの広さを示す基盤展開率について、KDDIとドコモは全国で90%を超える計画を出している。その中でもKDDIは「他社を大きく上回る4万局を超える基地局を設置する」(高橋氏)とアピールした。

KDDIは4万局を超える5Gの基地局を全国に整備する計画を立てている
KDDIは4万局を超える5Gの基地局を全国に整備する計画を立てている

 高橋氏は、4Gと5Gのネットワークを自動車の比喩で説明した。4Gがガソリンエンジン車であれば、5Gは電気自動車(EV)であるという。ガソリンエンジン車からEVには一気に移行せず、双方の技術を組み合わせたハイブリッド車が登場した。20年3月にKDDIが提供を始める5Gは、4Gのネットワークを使いながら、部分的に5Gを使うNSA(ノンスタンドアロン)という方式だ。これが自動車ならばハイブリッド車に相当するという。燃費がいいハイブリッド車の延長線上にEVがあるように、通信でも「燃費がいい4G+5GのNSAの先に、5G単独でネットワークを構成するSA(スタンドアロン)の5Gがくる」(高橋氏)と例えた。

 ハイブリッド車やEVのようにエネルギー効率がよくなれば、次に求められるのは「どこまでも走り続けられること」(高橋氏)。新プランとして発表している定額制プラン「auデータMAXプラン」(19年夏提供予定)が、どこまでも走り続けられるプランだという。「ネタバレになってしまうから詳しくは話せないが、ハイブリッドの4G+5Gの世界でどんなサービスを届けるとよいか、来春までにきっちり準備をしていきたい」と語る。

先行する韓国では3割が5G端末

 海外の5Gの状況にも言及した。米国と韓国で、世界初の5G商用サービス提供を競っていたが、数時間の差で韓国が初のサービスとなったこと、中国では19年に仮商用化、20年に商用化、ヨーロッパでは英国、フランス、イタリアが19年に商用化するといった状況を説明した。

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