小説家から受けた刺激 「飲んで満足」のシーンを意識
サントリースピリッツ 名誉チーフブレンダー 輿水精一氏(8)
山崎蒸溜所を訪れた大沢在昌さん(右から2人目)らと
サントリースピリッツの名誉チーフブレンダー、輿水精一氏の「仕事人秘録」。第8回では作家と組んだイベントから得たインスピレーションを語ります。
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ウイスキーの魅力をもっと知ってもらおうと、有名作家と組んでブレンドのイベントを開くことになった。
1998年に「ウイスキー&ミステリー」と題し、お酒に一家言ある作家の先生たちがウイスキーを語るトークショーが始まった。2000年からブレンドまで踏み込んでもらおうとなり、人気を博した。原酒選びや調合の手ほどきなどを求められ、イベントにかかわるようになった。
実施するにあたり、単に面白かったで終わりにするのではなく、ブレンドの本質を少しでも理解してもらいたいと思った。そこで、参加される作家の方々には事前にどういう香りや味を表現したいのかを考えてきてほしいとお願いした。
第1回は、固定メンバーである大沢在昌さん、逢坂剛さん、北方謙三さんに加えて、黒川博行さん、高村薫さん、東野圭吾さんの合わせて6人が参加された。簡単に説明した上で、用意した10種類の原酒をブレンドしてもらった。
先生方と私の7人で6作品をブラインドでテイスティングして点数をつけたところ、大沢さんのウイスキーがトップに立った。ブレンドしたウイスキーはその後に開いたトークショーの観客にもふるまったが、もっと飲んでみたいとの要望が多く寄せられた。そこで2回目からは優勝作を「謎」と銘打って商品化し、オンラインショップで販売するようにもなった。