和洋競演 「栗のお取り寄せスイーツ」ベスト10
栗は秋の実りの代表格。取り寄せができる和洋の栗スイーツを専門家が試食して選んだところ、収穫したばかりで風味が豊かな「新栗」の商品が上位に並んだ。
国産の新栗と砂糖だけを材料に使い、風味豊かに炊き上げている。新栗特有の香りや味わいを損なわないよう、急速冷凍をして発送する。1個ずつ茶巾しぼりにする手間がないため、栗きんとんの中では割安な値段。冷凍保存できるため、自宅で好きなときに出来たての味を楽しめる。食べる時は、ラップを使って簡単に茶巾絞りができる。クリームを混ぜてモンブランにするなど、お菓子作りの材料としても使える。1キログラム入りなど大きなサイズの商品もある。
「秋の新栗ならではの自然な香り、ほっくりとした甘さが楽しめる」(藤原浩さん)、「和栗の新鮮な味わい、しっとりとした口溶けは格別」(下井美奈子さん)、「冷凍保存できるので、和風や洋風にアレンジしながら長期間楽しめる」(aiko*さん)
(1)300グラム入り1365円(2)毎年9月初旬から翌年7月ころまで(3)0120・37・3802、e-yamatsu.co.jp/
茶巾絞りにした1個の栗きんとんに4~5個ほどの国産栗を使っている。工程のほとんどが職人による手作業。収穫したばかりの新栗を蒸し、実を取り出し、砂糖を加えて炊き上げる。加える砂糖の量は職人が調整する。栗の粒々とした食感をあえて残すことで、素朴な独自の食感に仕上がるという。
「和栗の繊細な香りとうまみが凝縮。個包装なので贈り物にも重宝する」(下園昌江さん)、「栗の素朴な甘みとほっくりした食感がいきている」(小松めぐみさん)、「栗の甘みが濃く、口溶けが上品」(岩谷貴美さん)
(1)6個入り1425円(2)9月から翌年1月(3)0120・02・0780、www.suya-honke.co.jp/
表面をキャラメル色に焼き上げたパイの中に、食べ応えがあるイタリア産の栗と、アーモンド粉、栗ペーストを混ぜたクリームが入っている。パイはフランス産の小麦粉とバターを折り込み、こんがりと硬めに焼き上げている。
「パイは配送時にしけることが多いが、サクサクとした食感を保っている」(平岩理緒さん)、「大粒の栗は迫力がある」(chicoさん)
(1)6個入り2541円(2)9月初旬~10月末まで(3)077・581・3966、www.wbolero.com/
創業140年の同社。数ある秋の和菓子の中で特に人気の商品が「栗月下」だ。蒸し栗のほくほくとした食感をそのままいかし、独自の製法で押し固めている。和栗本来の素朴な味わいが楽しめる。
「どこを切っても栗の味。熱いお茶と一緒に楽しみたい」(畔田隆弘さん)、「渋皮もほんのり香り、栗の滋味があふれている」(chicoさん)
(1)1本入り2310円(2)9月1日~翌年2月上旬(3)0120・55・9160、taneya.jp/
クグロフは、同店のシェフが修行したフランスのアルザス地方の伝統菓子。発酵バターとアーモンドパウダーを使ったコクのあるケーキ生地に、九州産の大粒の栗の渋皮煮を入れてしっとりと焼き上げ、さらにラム酒を振りかけている。
「栗の優しい味わいにホッとする」(下園さん)、「ラム酒と栗のふくよかな香りが調和。一瞬でリッチな気分になる」(chicoさん)
(1)3000円(大サイズ、ネット価格)(2)通年(3)092・762・7700、www.jacques-fukuoka.jp/
材料に使う栗はすべて、強い甘みが特徴の丹波栗。大粒の栗の渋皮煮をエダムチーズの生地に入れて、香ばしいタルトに焼き上げている。チーズのコクと栗のうまみが調和している。ワインにも合う一品。
「栗がたっぷり。サクサクとした食感、チーズの塩味もよく完成度が高い」(岡崎正輝さん)、「さすが丹波の栗。栗とチーズの相性の良さは驚き」(藤原さん)
(1)2700円(2)10月から3000台の限定販売、無くなり次第終了(3)0773・27・1151、muraichi.com/
花嫁の「わたぼうし」をイメージしたという白くて軟らかな求肥(ぎゅうひ)で、和栗のあんをふんわりと包んでいる。和栗は主に丹波産を使う。栗の粒や渋皮をほどよく残しながら、クリーミーなあんに仕上げている。春にはエンドウ豆のあんの商品も登場する。
「とろけるように軟らかな求肥から、栗が飛び出してくる感覚がいい」(畔田さん)、「形が上品で愛らしい」(小松さん)
(1)3個入り1260円(2)9月上旬~11月下旬(3)075・495・5588、www.wakuden.jp/
秋に収穫した新栗のみを職人が丁寧に甘露煮にしている。あんの倍ほどの栗がぎっしりと詰まっている。あんはあっさりとした味わいで、甘露煮との相性がよい。
「しっとり甘さ控えめのようかんが主役の栗を引き立てている」(平岩さん)、「国産新栗がぎっしりでぜいたく」(下井さん)
(1)3885円(レギュラーサイズ、化粧箱入り)(2)9月初旬~翌年1月ごろ(3)06・6211・0221、www.angetsu.co.jp/
どこを切っても栗が断面いっぱいに広がるぜいたくなケーキ。バターと和三盆糖を使ったケーキ約650グラムに、砂糖を控えめに炊いた栗の甘露煮が約400グラム入っている。
「栗そのものがとてもおいしい。生地はバターの香りが良く、焼き色も美しい」(岡崎さん)
(1)3980円(2)通年(3)0120・53・5400、www.otoemon.com/
創業200余年の老舗。栗と砂糖だけで練り上げた伝統の栗あんに刻んだ栗の粒を加えて、皮にたっぷり詰めた。
「さすが栗を知り尽くした店。塩気のある皮が栗の個性を引き立てている。家族で楽しみたい」(藤原さん)
(1)1個160円(2)通年、10月から新栗使用(3)0120・00・1590、www.kanseido.co.jp/
和洋色々 至福の味わい
1位と2位は共に岐阜県中津川市の栗きんとん。同市は栗きんとん発祥の地とされ、江戸時代から山栗を使った栗料理が名物の宿場町だったという。蒸した栗をつぶして、砂糖を混ぜて餅にまぶしたり、茶巾で絞ったりしたのが始まりといわれ、今でも十数件の専門店が軒を連ねる。
世界で栽培されている栗は、国内のニホングリ(和栗)のほか、チュウゴクグリ、ヨーロッパグリなどがある。ニホングリは粒が大きいのが特徴で、収穫量が多いのは茨城県、熊本県、愛媛県など。京都と兵庫にまたがる丹波地域でとれる「丹波栗」はブランド名で、香りや甘みが豊かといわれる。
チュウゴクグリは小粒で渋皮がむきやすく、焼き栗として有名な天津甘栗に使われる。イタリアやフランスが主産地のヨーロッパグリはマロングラッセなどの菓子材料にも広く利用されている。
最近は洋菓子店でも「和栗の風味のよさに注目するシェフが増えている」(下園昌江さん)。5位「パティスリージャック」、6位「京・丹波 むらいち」は、和栗を取り入れた洋風スイーツだ。
新栗を使った商品は販売個数が限られるものも多いので、早めに確認をするのがおすすめだ。
蒸し羊羹、東日本で定番
ランキングでは西日本の商品が優勢だったが、東日本の商品では栗菓子定番の栗蒸し羊羹(ようかん)を推薦する声が多かった。
とらや(東京都港区)の季節商品「栗蒸羊羹」は化粧箱入りがあり、贈り物でも喜ばれそうだ。中松屋(岩手県岩泉町)の「響の山」は羊羹の中心に栗あんを入れたもので、地元では幅広い世代に親しまれている。
紹介した商品は取り寄せのほか、百貨店で購入できるものも多い。秋の催事に登場することもあり、販売店や百貨店のホームページなどで日程や販売商品を調べられる。
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表の見方 商品名の下の地名は本社・本店の所在地。数字は選者の評価を点数化。(1)価格(送料別)(2)販売時期(3)取り寄せ先の電話番号やホームページ(頭のhttp://は省略) 記事中のリンクは掲載時のものです
調査の方法 取り寄せが可能な栗を使った洋菓子、和菓子を対象とした。大手百貨店の売れ筋、専門家の推薦などにより21商品を候補に選出。専門家に実際に試食してもらい、順位を付けて選んでもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
aiko*(お取り寄せ生活研究家)▽岩谷貴美(フードジャーナリスト)▽岡崎正輝(グランドハイアット東京 ペストリー副料理長)▽畔田隆弘(三越伊勢丹銀座店 食品営業部マネージャー)▽小松めぐみ(フードライター)▽下井美奈子(スイーツコーディネーター)▽下園昌江(お菓子研究家)▽chico(スイーツライター)▽平岩理緒(『幸せのケーキ共和国』主宰)▽藤原浩(フードアナリスト協会常任理事)
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