職場の希少種は守られる 組織の歯車抜け出す能力とは第34回 希少性の法則

どうやって完売御礼を達成するか?

ゲストとして呼ばれたイベントで著書販売をお願いされることがよくあります。会場のロビーあたりに店開きをして、著者自らが本を販売する催しです。

飛ぶように売れると思いきや、案外苦戦を強いられます。こんなところで買わなくても、Amazonで注文すればすぐに届けてくれますから。他のゲストがいるときはなおさら、売り負けないようにしなければなりません。皆さんだったら、どんな手を使って完売御礼を狙うでしょうか。

すぐに思いつくのは、「サイン」や「握手」のサービスです。当然、これはデフォルトでやります。可能であれば、この日だけの割引もやりたいところです。その他、もっと大切な工夫があるのですが、思いつきませんか。完売に持っていくための、とっておきの秘策が。

ヒントを言えば、本が一番売れるのがイベントの終了時です。買った本を持ち歩くのが大変というのもありますが、買うか買わないかの最後の決断が迫られるからです。そこでどうやって財布の開かせるかがポイントとなります。

答えを言えば、「もうなくなってしまうかも?」という焦りの気持ちをあおることです。

たとえば、100冊用意したとしても、そのまま全部並べたのでは「まだたくさんある」とお客は安心してしまいます。ところが、10冊ずつ小出しにすれば、目に見えて減っていくのが分かり、不安になります。その上で、「残り3冊!」「あと10分!」「今だけ!」と追い込むのです。

この効果は絶大で、残り数冊となると、奪い合いになるくらいです。私の人気が高いせいではないところが、複雑な気持ちになるのですが……。

失われていくものに価値を感じる

私たちの社会では、数が少ないものは価値があるとされます。これを「希少性の法則(原理)」と呼びます。それを証明した、社会心理学者のS・ウォーチェルの有名な実験があります(R・チャルディーニ『影響力の武器』)。

参加者にクッキーの味見をしてもらう実験です。参加者の半数は、10枚のクッキーが入った瓶から1枚を取り出して食べてもらいました。もう半数は、2枚しか入っていない瓶から、1枚を取り出して食べてもらいました。

すると、後者、すなわち希少なクッキーを食べたほうが好意的な評価をしました。「また食べたい」「魅力的」「高級感がある」と声が前者よりも多かったのです。