――医療保険の財政面の影響が心配です。

企業単位でつくっている健康保険組合の中には規模の小さいところもあります。このような健保組合で超高額薬を使う患者がいれば、財政が一気に悪化して保険料の大幅引き上げに直結しかねません。このような場合、健保組合の全国組織による交付金が支給され、大きな影響が出ないようにはなっています。しかし交付金の財源も結局は全国の健保組合の負担ですから、高額薬の登場はじわりじわりと影響するでしょう。

国も高額薬の価格引き下げに取り組んでいます。例えば、前述のオプジーボの価格は今では当初の4分の1程度に下がっています。対象となるがんの種類が当初よりも広がり、対象患者が増えたので価格を引き下げられると判断したのです。以前からこうした仕組みはあったのですが、より頻繁に機動的に価格を下げられるように見直しました。

ほかにも、同じ病気に使う新薬と既存薬の費用対効果を調べて、効果の割に新薬の価格が高すぎると判断した場合は薬価を下げる仕組みなども導入されました。

――高齢化も医療保険の財政に影響しますよね。

その通りです。高齢者は若い世代よりも医療費を使いがちなので、高齢化が進むほど医療費も増えていきます。国の制度から支払う医療費は現在、年間40兆円ほどですが、2040年には67兆~69兆円ほどに増える見通しです。高額薬についてだけでなく、薬の過剰投与や重複投与もなくすなど、なるべく全体的に医療費が膨らまないような対策も必要になります。

それでも、国民の誰もが必要なときに十分な医療を受けられる制度を維持するためには、健康保険料や税のある程度の負担増は避けられないのではないでしょうか。

ちょっとウンチク 求められる価格の透明性

薬価を決める際、国のルールでは製薬企業の情報開示の程度によって価格が調整される部分がある。キムリアの薬価は原価などの十分な情報開示があれば4000万円以上になったはずだったが、そうはならなかった。不利益を被っても開示を進めなかったことを踏まえ、「まるでブラックボックス」という声も聞こえる。

新薬の高額化が進む中で、その妥当性を問う声は世界的にも広がりつつある。世界保健機関(WHO)でも医薬品価格の透明性が必要だとする議論が起こる。公的制度でその費用が賄われる薬だけに多くの関係者の納得は欠かせない。

(編集委員 山口聡)

■今回のニッキィ
帯刀 美晴さん 2年半ほど、障害児の職場体験に付き添うボランティア活動(ジョブサポーター)をしている。「最初に付き添ったお子さんから、働き始めたと連絡をもらいうれしかったです」
藤井 智子さん 生協の生活アドバイザー。活動団体がNPO法人となった。「今年は消費増税や老後2000万円問題など、家計を守るにはどうすべきかといった生活設計への関心が高まりそうです」

[日本経済新聞夕刊 2019年7月8日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。

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