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ニッキィの大疑問

裁判員、「やってよかった」97% 辞退率は7割近く

2019/7/8

――10年間で裁判は変わったと聞きます。

まず判決までの期間が短くなりました。市民を長期間拘束することはできないので、裁判の前に争点を絞る仕組みを導入しました。裁判員裁判の平均日数は2018年では6.4日です。また、市民は法律の素人ですから「わかりやすさ」が重要です。ディスプレーを使い、語りかけるように説明する、などの工夫がされるようになりました。

判決の重さでは、殺人事件などで厳罰化の傾向がみられます。その一方で執行猶予が付く判決も増えています。「介護疲れの果ての事件」などで、被告の事情を市民がくみ取った結果と思われます。ただ裁判員が参加するのは一審だけで、二審で判決が変更されることもあります。裁判員裁判ではこれまでに37人に死刑判決が出ていますが、うち5人は二審で無期懲役となりました。過去の判決の積み重ねと、市民感覚のバランスをいかに取るかということも難しい点です。

――課題もあると聞きます。改善点は何ですか?

一番の課題は辞退率の高さでしょう。病気や介護などを理由にした辞退者の割合は当初の50%台から70%近くにまで増えています。最高裁は国民の年齢構成や職業構成から考えて問題はない、としていますが、参加しない人が多いというのは制度の理念に関わる大きな問題です。

裁判員の休暇制度を整えている会社も増えましたが、中小企業などでは難しい面もあります。雇用主に制度への理解を求める広報活動に力を入れるなどして、裁判員に選ばれた人が参加しやすい環境をつくることが大切です。

裁判員の負担も考える必要があります。一つは長期化です。これまでで最も長かった裁判では207日もかかりました。先ほど18年の平均日数は6.4日といいましたが、制度が始まった当初は3.4日でした。期間が長くなると仕事を持つ人は参加しにくくなってしまいます。その一方で事実解明という面から考えると、短くすればいいというわけではなく、大きな課題といえます。

裁判員を経験した人の約97%は「やってよかった」と感じています。選ばれる前の気持ちから大きく変化しています。経験者の声を広く伝える場をもっと増やすなど、工夫をすれば辞退者の減少にもつながるでしょう。10年経過しましたが、まだ始まったばかりの制度です。よりよい制度に向けて、改善すべき点はためらうことなく変えていけばいいと思います。

■ちょっとウンチク

歴史や文化が土台に

市民だけで有罪か無罪かを決める陪審制度の国である米国の検事に、「市民が裁く意味」を尋ねてみたことがある。苦笑いを浮かべながらの返答は、「理性的と感情的。異なる人種。お金持ちと労働者。様々な人がいるので、陪審裁判はラスベガスに行ってポーカーをするようなものだ」――であった。

それでも制度への信頼は揺るがないのだという。「米国民は選ばれた市民に裁かれる権利がある」「どのようなタイプの市民でも納得させられるのが正しい捜査」。司法は単に制度としてあるのではなく、その国の歴史や文化、思想の上に成り立つものだと感じ入った。

(編集委員 坂口祐一)

■今回のニッキィ
海老沢 亜希子さん エネルギー関連会社勤務。6月に両親ら家族5人で伊豆大島に旅行に出かけた。「樹木葬の墓地があるので墓参りが目的でしたが、家族旅行は20年ぶりぐらい。楽しめました」
鈴木 恭子さん 公共機関勤務(非常勤)。ファイナンシャルプランナーの勉強を始め資格も取得。その活動の一環で地域とのつながりも増えた。「もっとコミュニティーとの関わりを深めたい」

[日本経済新聞夕刊 2019年7月1日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。

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