それをうまく使っているのがTVの連続ドラマです。毎回見てくれるリピーターをどれだけ増やすかが、視聴率アップに欠かせないからです。
月9だろうが大河ドラマだろうが、何か大きな展開が予期させるところで、必ず、「続きはまた来週」となります。後の予告編でのチラ見せのほうが、ずっと頭に残っていたりします。そうやって、いいところで中断させられると、次を見ざるをえなくなります。
バラエティー番組でCMに入るときも同じです。「この後、まさかの展開が待っていた!」「60秒後に奇跡が起こる!」とテロップとナレーションが入ったところでCMとなります。続きを見たくなる誘惑に勝つのは至難の業。毎度それをやられ、結局ズルズルと最後まで見てしまうわけです。
巧妙に誘導されているかもしれない
「ツァイガルニク効果」は、ビジネスのさまざまなところで活用されています。マーケティングにおける応用例にこんなものがあります。
一番目につくのがTVコマーシャルをはじめとする広告物です。わざと、商品やサービスの全部を語らず、謎や疑問を抱かせたところで「続きはウェブで」となるものがたくさんあります。ツァイガルニク効果を使って、自社のウェブサイトに誘導しているのです。
さらに手の込んだ企業では、ウェブを見てもズバリ知りたいことが書かれておらず、やはりチラ見せだけ。それに釣られて、どんどんページをめくっているうちに、結局、全部読まされてしまう仕掛けになっています。
ネットの話で言えば、この効果を使ったニュースや解説記事も多く見られます。最初の1ページ(もしくは数百文字)は無料で読め、そこから先は有料会員でないと読めないようになっているものです。記事の構成もうまくしたもので、ちょうど本題に入ったところで、無料サービスが終わるようになっています。
よくある「初回のみ無料」というのも同じです。雑誌やサプリメントなど、連続して購入してほしい商品の場合、初回をタダにしているものが見受けられます。雑誌であれば続きが読みたくなり、サプリメントも一定期間飲まないと効果が現れません。未完了のところで止めるわけにはいかず、有料で続けることになります。
あえてキリの悪いところで帰る
皆さんは、仕事がたまっているとき、職場から帰る判断をどこでされているでしょうか。
おそらく多くの方が「今日の分をざっと片づけてから」「キリのよいところまで」ではないかと思います。部下がいる人なら、当然のようにそう指示します。「片づいたら、飲みに行こう」となるケースもあります。
それに対して、完了させずに帰って、翌日早く出社して仕上げる、という手があります。
未完のまま帰るとなると、ツァイガルニク効果が働いて頭の中に残ります。家に帰っても考え続けることになります。環境が変わることで、何かをひらめいたり、思いついたりするかもしれません。ひょっとすると、完了させて帰るよりも、よいものが翌朝できあがるかもしれません。
ここ数年の働き方改革で残業に厳しい目が光っています。もう少しで片づくところで、やむなく帰宅せざるをえなくなることもあります。そんなときは、こんな風にポジティブに考えてみてはいかがでしょうか。会社を出たら仕事のこと忘れたい、という方には向きませんが……。
ツァイガルニク効果というと恋愛をはじめとする「人間関係術」を説くものが多くあります。「小出しにして興味を引け」「ミステリアスを演出せよ」といった類の話です。
プラスの効果があるのかもしれませんが、意図がばれたときに信頼を損なってしまわないか心配です。マーケティングでの応用も同様、あざとくやって元も子もなくならないよう、相手の気持ちも考えた上で賢く使うようにしましょう。
