得より損をするのが怖い 会社が変わらない本当の理由第31回 プロスペクト理論

あるいは、キャッチコピーをつくるときも役に立ちます。実は、このコラムのタイトル、企画段階で2案がありました。どちらなら読んでみたいと思いますか。

<A案>知っていると得をする「ビジネス法則」

<B案>知らないと損をする「ビジネス法則」

ご存じのように、採用されたのはB案にアレンジを加えたものです。今このコラムを読んでいる方は、既にプロスペクト理論の術中にはまっているわけです。こんな風に、私たちのまわりにあちこちで活用されており、それこそ覚えておかないと損しますよ。

なぜ大きな変革が進まないのか?

カーネマンによると、人間に限らず「あらゆる動物は、得をすることより損を防ぐことに熱心」(D・カーネマン『ファスト&スロー』、以下同様)だそうです。

そのため、縄張りを持つ動物の場合、それを侵す敵が現れると、必死になって自陣を守ろうとします。その努力は、縄張りを攻める(=得を得る)ほうより、縄張りを守る(=損を避ける)ほうが大きくなります。結果的に、「ほぼ間違いなく縄張りの主の勝利に終わる」そうです。損失回避傾向のおかげで、防衛する側が強いわけです。

この話を企業の改革に当てはめて考えてみましょう。組織の再編や業務の合理化を断行しようすると激しい抵抗に遭うのが常です。改革によって不利益を被る「負け組」が出てくるからです。既得権を守るためにあの手この手で必死に抵抗してきます。

社会システムの変革でも同じです。制度を変えることで既得権を失う守旧派が、まさに命がけで猛烈な反対運動を展開します。その結果、「この人たちに好都合な改革になり、当初の計画より費用は高く効果が低い」ということになりがちです。

残寝ながら損失回避傾向への決定的な対処法は見つかっていません。損を大きく上回る得を用意したり、損への恐怖を取り除いたりすることが重要となります。リスクのあることに一緒に取り組む仲間の存在も見逃せないものがあります。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

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