得より損をするのが怖い 会社が変わらない本当の理由第31回 プロスペクト理論

こういった心の働きを「損失回避傾向」と呼びます。行動経済学者D・カーネマンとA・トベルスキーが提唱する「プロスペクト理論」の代表的な考え方の一つです。

この理論によると、損失の約2倍の利益が見込めないと、ギャンブルに出ようとしないそうです。これを「損失回避倍率」と呼びます。個人差はあるものの、一般的には1.5~2.5倍だと言われています。(1)で言えば、コインの表が出たら2万円もらえる、となったら勝負に出る人が増えてくることになります。そう言われると、実感に合うような気がしませんか。

ただし、損失回避倍率は金額によって変わります。(1)コインの表が出たら2億円、(2)裏表に関わらず4千万円となれば、やはり(2)を選ぶ人が大半ではないでしょうか。

金額が大きくなればなるほど、得られる満足感(幸福度)の上がり方が鈍くなるからです(第20回:限界効用逓減の法則)。これらをまとめると、金額と心理的価値の関係はS字カーブで表されます。プロスペクト理論で最も有名な図で、ご覧になった方も多いと思います。

何かを失う恐怖にアクセスする

難しい話はこれくらいにして、この理論のビジネスへの応用を考えてみましょう。一番思いつきやすいのがマーケティング活動です。

人は得をすることよりも、損をすることを嫌います。であれば、「損をしない」ことをアピールすれば、購入につながりやすくなることになります。

典型的なのが、「気に入らなかったら代金をお返しします」というキャンペーンです。損をすることがないと分かっていれば、安心して購入ができます。実際に返金する人はまれであり、販促効果を考えれば割のよいキャンペーンとなります。

ポイントサービスも同様です。大抵はポイントに有効期限があり、「今月、○○ポイントが失効します」というお知らせが届く仕掛けになっています。これも「せっかくためたポイントを失いたくない」という心理をついて、お店に足を向かせる作戦です。