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手作り愛を支えるよろこび 東急ハンズの「売り場魂」 東急ハンズ 渋谷店グループリーダー 末廣三知代さん

2019/6/26

■自由度が高すぎたゆえの落とし穴

売りたい商品がなければ担当者がオリジナル商品を開発することも普通でした。今以上に、売り場の担当者に裁量権があり、「やってごらん」というムードが色濃く、自由度が高かったです。

売り場で働き始め、庶務課での7年間を経て、再び売り場に戻った

ただし、それぞれが売り場の責任者として自由に立ち回れる分、落とし穴もありました。例えば、目の前のお客様から相談を受ければ「なんとかしてあげたい」と思い、メガネや懐中電灯の修理に無償で対応。気がつけば1時間接客をして売り上げが100円のネジ1本というようなことも。また、商品への思い入れが強いあまり、1年に1個しか売れない品をずっと棚に並べていたこともあり、それが良しとされてきました。それでは商売は立ち行きません。

2000年代以降のネットショップの台頭もあり、大規模小売業は苦戦を強いられるようになります。時代の変化に応じ、私たちも変化していきました。バイヤーと販売員の分業を図ったり、マーケティングデータを商品管理に生かしたりするようになり、小型店舗の開発で新たな顧客層の取り込みにもチャレンジしました。

■まさかの異動で売り場に別れ

そんな変革期、私は売り場を離れ、新宿店の庶務課へ異動していました。辞令を受けたのは、数々の商品を担当しモノを売る楽しみを感じていた入社5年目。バックオフィスへの異動はまさに青天の霹靂(へきれき)でした。あの時のショックはいまだに忘れられません。「なぜ私が?」「売り場に戻りたい」という気持ちを抱えながら働いていました。

気持ちが切り替わったのは、採用業務に携わるようになってからです。表現は悪いですが「モノではなく人という大切な商品を仕入れ、育てる仕事なのだ」と思ったのです。

人事改革によりスタッフが大きく入れ替わり、私は契約社員の採用も担当することに。面接や、研修テキスト、プログラムづくりに奔走しました。次々と入社してくる多様なタイプの人に、東急ハンズの哲学や販売スタイルを浸透させるにはどうしたらいいか悩みました。なかには「自分には合わない」と、1日で辞めてしまう人もいて、人事の仕事の難しさを感じました。7年間、庶務課に在籍。今振り返れば、いい経験をさせてもらいました。

■今、実店舗でモノを売る意味

売り場担当に戻ったのは10年前のことです。仕入れの制度も販売スタイルも以前とは変わっていたうえ、時代はネットショッピングが当たり前になっていました。久しぶりの売り場、しかも異動と同時に主任へ昇格。不安と緊張のなかで2回目の売り場時代がスタートしました。

担当したのはスーツケースでした。売り場に立って数日後、スーツケース選びに迷っているお客様が来店。私はまだ商品知識が追いついておらず、お客様と一緒にひとつずつスーツケースを開け、機能や使い心地を確認しながら検討をしていきました。最後に「今日は買わない予定だったけれど、あなたから買うよ」と言って購入されたのです。これが実店舗の対面販売の意味だ、と思いました。

例えば、DIY売り場で「2つの木を垂直につなげたい」というお客様がいれば、釘、ネジ、L字金具、接着剤など様々な選択肢を一緒に検討できます。答えは必ずしもひとつではありません。商品や手段を選ぶコンサルティングをできるのが実店舗での魅力であり、販売員である私たちのいる意義だと思っています。

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