エシカル消費、企業はなぜ注目? 「ESG」が後押し

――企業はこうした動きにどう対応していますか。

「ユニクロ」などを運営するファーストリテイリングは中国やベトナムなど世界11カ国にある約240の主要な生産委託先の縫製工場のリストを公開しています。サプライチェーン(供給網)の透明性を高め、適切な労働環境を実現するためとしています。

花王は30年までの長期戦略を策定し、環境負荷の少ないプラスチック製の包装容器を流通させ、工場を含めた同社の全拠点でリサイクルできない廃棄物をなくす計画です。米機関が公表する「世界で最も倫理的な企業」にも13年連続で選ばれており、こうした取り組みを経営幹部の評価対象にしています。

良品計画は4月に開業した東京・銀座の「無印良品」の店舗で買い物袋を原則、紙製に切り替えました。ローソンはまだ安全に食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそうと、消費期限切れ間近の弁当やおにぎりなどの購入金額の5%を子ども・子育て支援の団体に寄付する実験をまず愛媛県と沖縄県で始めました。全国展開も視野に入れています。

消費者のエシカル志向に応えるだけでなく、「ESG(環境・社会・企業統治)」への取り組みが投資家の判断材料になってきたことも、企業を後押ししているようです。

――企業の価値を測る物差しも増えているのですね。

もうかっていても、社会的な問題を放置しているような会社は「良い会社」とは言えません。企業の労働環境や人権問題を監視する非政府組織(NGO)などもあります。例えば、欧米の大手アパレル会社が生産委託していたバングラデシュの工場が13年に倒壊し犠牲者が出た際は、安全を軽視して下請けの生産現場の労働者の人権を踏みにじったなどと批判されました。

大量生産・大量廃棄の時代は終わりました。これからは消費者一人ひとりの「個」の価値観や気持ちに応える商品を生み出す力が企業には求められています。

ちょっとウンチク

利他的な行動、高次な欲求

米国の心理学者、A・マズロー氏は人間の欲求を5段階に分けたことで有名だ。まずは食欲などの生きていくための生理的欲求に始まり身の安全、社会的組織に属するものや、他人から認められたい承認、そして自己実現へと高まっていくことを明示した。晩年のマズロー氏はさらに高次の欲求があると研究を進めていた。

そのテーマは哲学的、倫理的なものだったとされる。底流にあるのは利他的な行動への欲求だ。寄付行為などは成熟した社会基盤があってこそ成り立つ。日本は無意識のうちに空気を吸うようにエシカル消費が広がる時代になりつつある。

(編集委員 田中陽)

■今回のニッキィ

斉藤嘉子さん 主婦。乳がんの治療のためにできなかったヨガを4年ぶりに再開した。週2~3回、長いときは2時間スタジオで汗を流すことも。「心身ともにリフレッシュできて気分がいいです」

山口恵里さん 営業職。食い倒れの本場、大阪に赴任していた2年間に体重が7キログラム増えた。半年前に東京に戻り、食生活を改めた。「食物繊維が豊富な食事が功を奏し、ようやく元に戻りました」

[日本経済新聞夕刊 2019年6月17日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。

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