「2025年までに決済のキャッシュレス比率を40%に」という政府の目標に向かって、日本でもキャッシュレス化への取り組みが進んでいる。これまでは主にQRコード決済サービス事業者が打ち出すキャンペーンによる「競争」で普及を図ってきたが、2019年春以降は、「機能の違い」や「協調」による市場開拓の動きもみられるようになってきた。直近の動きを追った。

各種キャッシュレス決済に積極的に対応する松屋の店頭表示
各種キャッシュレス決済に積極的に対応する松屋の店頭表示

 QRコード決済サービス事業者が、高い還元率のキャンペーンを打ち出して、ユーザーにキャッシュレス決済の利用を促す構図は、2019年になっても依然として変わっていない。

LINEは会見で「平成最後の超Payトク祭り」の実施を発表
LINEは会見で「平成最後の超Payトク祭り」の実施を発表

 例えばLINE Payは2019年4月18日から30日まで、文字通り“平成最後のキャンペーン”として、最大20%(上限1万円)を還元する「平成最後の超Payトク祭」を実施した。直前の4月17日にリリースした専用アプリ「LINE Pay」を使って、ユーザーがコード決済した場合、上限1万円が還元された。

 また、メルカリの全額出資子会社であるメルペイも、4月26日から5月6日まで、ユーザーが支払った金額の50%を翌日にポイントで還元する「メルペイまるっと半額キャンペーン」を実施した。最大還元額こそ2500円相当(2500ポイント)と競合相手のキャンペーンに比べると低めだが、非接触決済の「iD」とコード決済の両方に対応。かつセブン-イレブン店頭でのiD決済なら、支払い額の70%相当がポイントとして還元された。期間中、メルペイによる決済は通常より大幅に増えたという。

 さらに、QRコード決済サービス事業者としては老舗のOrigamiが運営する「Origami Pay」や、楽天ペイメントが運営するQRコード決済サービス「楽天ペイ」、NTTドコモが運営するQRコード決済サービス「d払い」なども、利用できる小売店や利用条件を細かく変えながら、10~20%のポイント還元キャンペーンを19年になってもこまめに打ち出し続けている。

LINEは営業赤字、PayPayは増資へ

 もっとも、こうした高還元キャンペーンを、QRコード決済サービス事業者がいつまでも自腹で展開し続けられる保証はない。

 例えばLINEの19年12月期第1四半期決算(19年1~3月)を見ると、前年同期比で増収を達成したものの、営業損益は78億9200万円の赤字に転落している。主因はLINE Payの積極的なプロモーション、つまり高還元キャンペーンだ。同社は19年12月期にFintechやAI(人工知能)の分野に600億円の戦略投資を決めているとはいえ、負担が大きいのは数字が証明している。

 ソフトバンクとヤフーが折半出資しているPayPay(東京・港)も19年5月8日、ソフトバンクとヤフーの親会社であるソフトバンクグループを引受先として、同社のこれまでの資本金と同額の約460億円の第三者割当増資を実施すると発表した。これで同社の資本金は約920億円と、これまでの2倍になる。顧客を開拓するための積極投資という位置付けではあるが、近い将来、3度目、4度目の増資に踏み切れるかは定かではない。

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