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新入社員のころ、会社の研修所で

新入社員のころ、会社の研修所で

サントリースピリッツの名誉チーフブレンダー、輿水精一氏の「仕事人秘録」。第3回では、ウイスキー需要が伸び続けていた入社1、2年目を振り返ります。

<<(2)天体観測でウイスキーに親しむ 発酵学びサントリーへ

1973年に入社し、多摩川工場の技術管理部門へ配属された。

川崎市にあった多摩川工場は、ビール以外の飲料製品を静岡県以北の地域へ供給していた。瓶詰めラインが10基あり、7~8割を「オールド」などウイスキーの生産に使っていた。新入り技術者に工場全般について学ばせる狙いがあったのだろう。私の仕事は顧客からの問い合わせへの対応だった。

営業部門などから上がってきた案件を受け問題点を探して報告書を作り、再び現場に戻すのが基本の動きだ。ただ当時は、消費者の気持ちを理解しないまま仕事にあたっていた。その都度、報告書を出すものの、上司には「そんなものでお客様が納得すると思うのか」としかられて、散々書き直しを命じられた。

顧客から直接、電話もかかってくる。話を聞いているうちに原因が見えてきて、すぐに理由を説明するとかえって怒り出されてしまい、1時間ぐらいお説教されたことがあった。まず言い分を聞いてもらいたいとの思いがあり、いきなり解説など求めていなかったのだ。

例えば、ウイスキーに澱(おり)があるとの指摘を受けたことがあった。液中にぎりぎりの濃度で溶けている成分が温度の変化で結晶となり、沈殿する場合がある。それはうまさのもとだから取り除けばいいというわけでもないと我々は考える。しかし、消費者は気になるのだ。

商品に必要な条件はうまさだけではない。複数の要素を調和させるのは技術の課題でもある。ここでの経験で、作り手と飲み手では視点が違うと認識するようになり、ブレンダーの仕事にも役立っている。

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