鉄ちゃんでなくても楽しい「鉄道の博物館」ランキング
車両の研究や模型などに熱心なファンだけでなく、列車で旅に出かけたり、写真を撮ったりと鉄道の世界は様々な楽しみ方がある。鉄道に詳しくない人でも気軽に楽しめる鉄道博物館を専門家に選んでもらった。
「てっぱく図書室」を新設 2007年10月に開館した日本最大級の鉄道博物館。「明治の鉄道創業以来、140年にわたる歴史を振り返ることができる」(白川淳さん)。博物館全体の約半分の広さを占めるヒストリーゾーン=写真=には鉄道車両36両を展示。明治初期から現代までの鉄道を時期やテーマごとに紹介している。
新幹線開業日に合わせた企画展、スタンプラリーなどのイベント、食堂車で提供していたメニューなどをそろえたレストランも充実。7月には外国のものを含む鉄道関連の絵本や子ども向け図書約1000冊をそろえた「てっぱく図書室」を新設。実際に鉄道で使っていたイスに座り、旅行気分で読書を楽しめる。「大宮駅から乗るニューシャトルも1つのアトラクションのようで楽しい」(矢口正子さん)
(1)大人1000円(2)048・651・0088(3)JR大宮駅よりニューシャトル鉄道博物館(大成)駅下車、徒歩約1分
扇形車庫は国の重要文化財 1972年に日本の鉄道開業100周年を記念して開館した蒸気機関車専門の博物館。明治、大正、昭和に製造された蒸気機関車17形式19車両がある。7車両は今も動き「動く状態で保存する模範例」(水島英治さん)。大人200円の乗車券で1キロを約10分間かけて走る蒸気機関車の客車に乗れる。
蒸気機関車が並んで展示されている扇形の車庫=写真=は、東海道本線の大型蒸気機関車を収容するために1914年に作られたもの。「蒸気機関車だけでなく、重要文化財に指定された扇形の車庫も見どころ」(白川さん)。入り口部分は京都鉄道が1904年に建てた旧二条駅舎を利用している。「京都の観光名所の一つとして回れる立地も魅力」(大野雅弘さん)
(1)高校生以上400円(2)075・314・2996(3)JR京都駅より市バス梅小路公園前下車、徒歩約5分
実物の39車両を展示 登場した当時に世界最高速を記録したリニアなどの3車両を含め、歴代の新幹線や在来線など、39車両の実物を展示している。「蒸気機関車から0系新幹線、リニアまで、新旧の鉄道車両展示が充実している」(矢口さん)
鉄道ジオラマは東海道新幹線沿線などの景色の中を、N700系新幹線やリニアなどが走り、夜間作業も含めた「鉄道の24時間」を再現。「ガラスで仕切られていないので、ジオラマの走行音も楽しめる」(佐々倉実さん)、「屋外の117系車内で駅弁などが食べられるのも楽しい」(瀬端浩之さん)
(1)大人1000円(2)050・3772・3910(JR東海)(3)JR名古屋駅よりあおなみ線金城ふ頭駅下車、徒歩約2分
横川と軽井沢を結ぶ旧碓氷線の車両基地を利用。碓氷峠ゆかりの車両をはじめ30車両以上を展示し、運転講習を受ければ本物の電気機関車を走らせることもできる。「周辺の観光と合わせて、鉄道の旅が楽しめる」(矢口さん)
(1)中学生以上500円(2)027・380・4163(3)JR信越本線横川駅に隣接
1897年設立の東武鉄道の歴史がわかる博物館。開業時の姿に復元された最初の蒸気機関車をはじめ、実際に使われた車両が展示されている。実際に走る電車の車輪などを間近に観察できる。「企業博物館としても模範」(水島さん)
(1)大人200円(2)03・3614・8811(3)東武スカイツリーライン東向島駅に隣接
1962年開館。鉄道を中心にバスや自動車など様々な交通車両を展示する。「ブルートレインが土日に食堂として営業するのも楽しい」(米屋こうじさん)
(1)高校生以上400円(2)06・6581・5771(3)JR大阪環状線弁天町駅下車すぐ
明治時代の歴史的建造物である九州鉄道本社を改装した博物館。
(1)大人300円(2)093・322・1006(3)JR鹿児島本線門司港駅下車、徒歩約3分
「貨物列車」の専門博物館。屋外に展示された車両はいつでも見学できる。車庫を改装した博物館は毎月第1日曜のみ開館する。
(1)無料(2)059・364・2141(3)三岐鉄道丹生川駅前
2012年7月に開館した鉄道模型博物館。鉄道模型製作・収集家、原信太郎さん所蔵の模型や資料を展示している。
(1)大人1000円(2)045・640・6699(3)JR横浜駅から徒歩約5分
地下鉄だけを扱う専門博物館。日本の地下鉄第1号、銀座線1001号も展示。千代田線、銀座線、東西線など運転シミュレータも人気。
(1)大人210円(2)03・3878・5011(3)東京メトロ東西線葛西駅下車すぐ
■車両、模型…時忘れて
1位に選ばれたのは「鉄道博物館」(さいたま市)。開館して約5年がたつが「資料性の高い展示から体験型の運転シミュレータ、ミニ運転列車まで大人も子どもも確実に楽しめる」(弘中幸太郎さん)、「規模も大きくコレクションの充実ぶりも言うことなし」(水島英治さん)と、専門家の評価は変わらず高い。
2位は今年、開設40周年になる「梅小路蒸気機関車館」(京都市)。「多数のSLに囲まれ、SLが現役だった当時の気分を味わえる」(佐々倉実さん)。蒸気機関車が並ぶ扇形(せんけい)車庫は国の重要文化財に指定されている。京都駅からは徒歩でも約20分の場所にあるので行きやすい。
3位は2011年にオープンした「リニア・鉄道館」(名古屋市)。鉄道がどういう歴史をたどって高速になってきたか、その進歩を実車両を使って解説する博物館だ。JR東海が運営するだけあって新幹線の展示は充実。2003年に鉄道の世界最高速度(時速581キロ)を記録したリニアモーターカーも展示している。
「全国鉄道博物館」(JTBパブリッシング)などの著書がある鉄道史研究家の白川淳さんによると、全国には大小を含めると約200もの鉄道関連博物館があるという。「大きな博物館を回った後は、自分が乗ったことのある車両を探してみては」とアドバイスする。
■運転体験も多種多様
近年、鉄道ファンを中心に人気が高まっているのが、実際に運転席に乗り込み、車両を動かす「運転体験」だ。気軽に体験できるものから本格的なものまで、さまざまなタイプの運転体験ができる。
りくべつ鉄道(北海道)=写真=や一畑電車(島根県)では、小学校高学年から体験できるコースがある。一方、碓氷峠鉄道文化むらの運転体験は、事前に1日の学科実技講習を受け、修了試験に合格する必要がある。年齢も18歳以上(高校生は不可)。回数を重ねると連結体験などの本格的な操作もできるので、リピーターも多い。
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表の見方 数字は選者の評価を点数化。(1)入館料(2)問い合わせ先(3)アクセス =写真は各博物館提供
調査の方法 鉄道に関心を持ったばかりの人でも楽しめる施設を専門家にあげてもらい順位を決めた。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
▽今津直久(月刊「鉄道ピクトリアル」編集長)▽大野雅弘(JTBパブリッシング編集主幹)▽佐々倉実(鉄道写真・映像カメラマン)▽白川淳(鉄道史研究家)▽瀬端浩之(日本旅行鉄道プロジェクト)▽高橋信裕(文化環境研究所常務取締役)▽弘中幸太郎(クラブツーリズム)▽水島英治(博物館文化産業経営研究所理事長)▽矢口正子(月刊「旅の手帖」編集長)▽米屋こうじ(鉄道写真家)
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