Men's Fashion

似合う帽子探し 厳しい厳しい一期一会

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大宮エリーの なんでコレ買ったぁ?!(3)

2019.8.13

作家、演出家、画家、脚本家などの肩書を持つ大宮エリーさんは、自称「衝動買いの女王」。二度と着ない服や絶対に使わない小物たち……つい買ってしまったトホホなあれこれは数知れません。大宮さんが日経MJに連載したコラムをもとに出版された「なんでコレ買ったぁ?!」(日本経済新聞出版社)から、ファッションにまつわる衝動買いのエピソードをピックアップしました。「あーそれ、あるある」とニヤッとしたり、「意味わからない」と突っ込みを入れたりしながら、ゆる~く読んでみてください。




あるスタイリストさんに勧められた。「エリーちゃんさ、帽子かぶったらおしゃれに見えるわよ」おネエのスタイリストさん。これってたぶん、「あんたおしゃれに見えないわよ」というのが裏に含まれているのだが、そういうコンプレックスがある私は、もっとおしゃれにならないといけない→ 帽子を頭にのっければ、なんとかなるらしい→ 買おう。という流れに。

◇  ◇  ◇

で、そのスタイリストさんと帽子を買いに。が、なかなかこれが似合わない。頭やら顔が、残念ながら大きい。帽子って小顔の人が似合うのだ。がしかし、スタイリストさんはプロである。少し時間がかかったが、「あら、やだ、これじゃないの?」と選んでくれたのが、おお、奇跡!似合う!で、即購入したのである。

この一件により、私にとって似合う帽子というのは人よりも、厳しい厳しい一期一会であることを知った。だから会ったら最後、二度と同じような出会いはないかもしれないのだ。だから、「あれ?似合うかも!?」と思うと買うようになった。移動の合間で少し時間をつぶさないといけないタイミングのときは、やっぱり、掘り出し物を見てしまう。似合うのがもしかしたらあるのではないか、と。で、いまある帽子、なんと数えたら25個。中には、ハワイでみんなにつられて買ってしまったキャップやら、代官山のセレクトショップで勧められた馬術の帽子みたいなのとか。今考えても、馬術の帽子は似合うからって、おかしいよね? オシャレって本当に怖い。それからピンク色のハンチングとか、そして、世界的に有名な帽子デザイナーのミサハラダちゃんからプレゼントされたゴージャスなハットもある。

そう、ミサちゃんの影響は大きい。「エリーちゃん、帽子は顔の一部なのよ」イギリスでは特にそうだろう。ミサちゃんはいつもカッコよく帽子をかぶってキメていた。だから、彼女にもし帽子がないと、ん?て感じになるのだ。エリザベス女王も愛用のミサハラダ。確かに女王もハットがないと、ん?と違和感だ。

◇  ◇  ◇

で、こんなに似合う帽子たちが友人たちの協力で集まったのに、かぶってないっていうのが問題である。なぜかぶらないか。だってかぶると、「今日、キメてます!」って感じでどうも恥ずかしいの。習慣にすればいいんだろうけれど、まだ勇気が出ない。50歳から、たぶん、いきなりかぶりだすんで、待っててね!

撮影:諸井純二

大宮エリー

1975年大阪府生まれ。作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクター。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。著書に『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ』(新潮文庫)、『なんでコレ買ったぁ?!』(日本経済新聞出版社)など。 近年は画家としても活動。

大宮エリーの なんでコレ買ったぁ?!

著者 : 大宮 エリー
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,404円 (税込み)