一貫性ある仕事にはワナがある 上司が豹変する理由第26回 一貫性の原理

そのせいで、自分に有利となる材料を断片的につなぎあわせて、一貫性があるように見えるストーリーを無理やりでっちあげてしまう。こうなってくると、一貫性を保つことが目的化してしまい、冷静な思考ができなくなっています。いわゆる「意地を通せば道理が引っ込む」です。

人に一貫性を求めるのは間違い

最後に、一貫性の原理を考える上で、とても参考になる話を一つ紹介しておきましょう。

人の行動の一貫性に関して、心理学者のW・ミシェルが興味深い説を唱えています(W・ミシェル『マシュマロ・テスト』)。「個人の行動の全般的一貫性は、一般にあまりに弱過ぎて、ある種類の状況での振る舞いをもとにして、その人が別の状況でどう振る舞うかを正確に予想する目的では役に立たない」と言うのです。

ちょっと難しい表現ですね。分かりやすい例を挙げれば、「会社で誠実な人が、家庭でも誠実とは限らない」ということです。詳細は省きますが、さまざまな研究の結果にたどりついた結論です。

嘘だと思う方は、自分の胸に手を当てて考えてみてください。会社、家庭、学校、仲間内など、異なる状況において自分の言動にどれくらい一貫性があるでしょうか。自分はあると思っていても、周りはどう見ていますか。

なぜ一貫性がないかと言えば、人は状況に応じて振る舞いを変えるからです。要は、同じ状況に置かれたときに一貫性が生まれるわけです。状況に関わらず一貫性を期待するのは、勝手な妄想だと言わざるをえません。

そう考えれば、一貫性を崩すことへの抵抗が薄れます。それどころか、一貫性がないことは、臨機応変に対応していることの証しとなります。妙なとらわれを捨て去り、「君子は豹変(ひょうへん)す」(立派な人は時に応じて速やかに変化する)を心がけるのも、一つの生き方ではないでしょうか。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

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