一貫性ある仕事にはワナがある 上司が豹変する理由第26回 一貫性の原理

それに対して、「安全運転に関する小さくて目立たないシールを窓に貼らせてほしい」とお願いをすると、ほとんどの家は承諾してくれました。その2週間後に、大きな看板の設置をお願いすると、なんと承諾率が4倍以上の76%にもなったのです。

小さな要請を受け入れることで、「交通安全への意識が高い」という自己イメージができあがります。すると、二度目の依頼に対しても、一貫性のある行動を取ろうとして、進んで受け入れるようになるのです。

この原理を、交渉術に応用したのが、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」(段階的要請法)です。顧客を訪問したセールスマンが、わずかに開いたドアに足を入れる様からそう呼ばれています。先回紹介した「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」とあわせて覚えたい説得の技法です。

最初に、小さな要求をして相手に承諾してもらいます。それから少しずつ大きな頼みごとをしていき、最後に本当に飲ませたかった要求を持ちだすのです。「話だけ聞いてください」「ちょっと触ってみませんか」「しばらく使ってみませんか」「買ってもらえませんか」といった具合にエスカレートさせていくわけです。

「変わってしまった」と嘆く前に

一貫性の原理は、自分の行動に影響を及ぼすだけでなく、人の行動を受け止めるときに働くことも少なくありません。

たとえば、同窓会などで知人と旧交を温めているときに、「こんな奴じゃなかったのに」と思った経験はありませんか。あるいは、長年連れ添ったパートナーに対して、「変わってしまったな」と感じた経験はないでしょうか。

ところが、月日も過ぎ環境も変ったのですから、変わって当たり前のはず。変わらないほうが、おかしいです。

にもかかわらず、自分のことは棚にあげ、相手の過去の態度や行動が現在も変わらずにあると思ってしまいます。一貫性を求める気持ちが、合理的な思考をゆがめてしまっているわけです。一貫性バイアスとも呼びます。

あるいは、一貫性を求めるあまり、後に引けなくなった、という経験はないでしょうか。たとえば、直感で「この商品は絶対に売れる」と言ったばかり、惨たんたる市場調査の結果をつきつけられても、簡単に引き下がれなくなってしまった。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧