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ひらめきブックレビュー

独学でこそ知性は磨かれる 達人が流儀を指南 『自分一人で学び、極める。』

2019/5/20

「独学でマスター」と聞くと「すごい!」と「我流で大丈夫?」との、両極のイメージが浮かぶのではないだろうか。

本書『自分一人で学び、極める。』は、独学こそが知性を磨き創造力を高めると力説している。著者の山口謠司氏は音韻学、文献学の専門家。長年独学を実践してきたみずからの経験を振り返りつつ、その奥義を伝授している。

■自由、気がね無用の楽しさ

著者いわく、知識は自分で咀嚼(そしゃく)し醸して生きる知恵にしてこそ真の知性になる。咀嚼して醸すには何よりも自力が頼り。独学によってのみ知性は獲得できる。

では、なぜ「一人で」がいいのか。まず、時間も場所も自由、気がね無用であること。周りと足並みをそろえる必要がなく、自身の関心あるテーマや先学の著作を集中して読むことができる。つまり濃く、楽しく学べる。

この楽しさが重要だ。自分の興味の赴くままに読書を続けることで学びを深堀りしていける、と著者はいう。すべての本は縦横につながる情報を携えているため、深く読めば、本の背後や行間に隠れた情報を掘り当て、結びつけ、知識として蓄えることができるのだ。

■「読む」と「書く」とを組み合わせる

では具体的に、独学をどのように進めたらいいのだろう。著者は、インプットとアウトプットの組み合わせが大切だという。

インプットでは本の内容を「正しい」と思わず批評しながら読むことで、読解力を養う。

そのために他の本と比較、検証する。自分と他者双方の視点を持ちこみ、あらゆる角度から分析するのだ。インプット強化のためには、読後に各章の「40文字要約」を行うのがよい。必要な情報が取り出しやすくなり、自分の言葉に置き直すことで理解も深まる。

手にした情報を生きた知識に変換するには足を使う。出先でいろいろ見たり人に会って話したりすることで、知識の断片が意外にもつながってくる。前述の本の深掘り効果を足で形にするのだ。著者も気分転換に出かけた東京体育館が、古地図や古書の知識と重なって元徳川公爵邸跡地であることに気づいたという。独学は孤独な学びにあらず。外界に接してさまざまな刺激を受けることが重要なのだ。

アウトプットでは得た情報を他の人に明確に説明できるよう言語化、文章化する。こうして初めて知識が身に付くわけだが、書くのは苦手と臆することはない。40文字要約を活用して全体構成を考えたら、平易な言葉で説明を書く。これが基本だ。なお、書く作業は高速で行うのがよい。「制限時間内で書く」を繰り返すうちに文章力も向上する。著者はいつもタイマーを使って集中して執筆するそうだ。

独学で「この事象の背景は? この起源は?」とたどるうちに、次々に新たな疑問がわき、関心も広がるだろう。お仕着せのカリキュラムとは異なり、深掘りや寄り道も自由自在。こうして得た知識を武器にすれば新書1冊くらいは書けるはず。これぞ独学の創造的成果である。

今回の評者=大武美和子
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」エディティング・チームの一員。慶大卒。

自分一人で学び、極める。

著者 : 山口謠司
出版 : フォレスト出版
価格 : 1,512円 (税込み)

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