根拠なき自信を語る部下 使い方次第では宝にも第24回 ダニング・クルーガー効果

2019/5/8

知らないと大変!ビジネス法則

私には私のやり方がありますから

皆さんの周りに「根拠なき自信」を抱いている人はいないでしょうか。できもしない癖に、「私だってあれくらいの仕事は……」と大きなことを言う。その癖、ちっともやろうとせず、「なぜやらないか」の言い訳ばかりがうまい。

しびれを切らしてアドバイスすると、「私には私のやり方がありますから」と言って聞く耳を持たない。揚げ句の果てに、うまくいかないことはすべて人のせいにする。そんな人はいませんか?

自分の力量や特質を正しく把握できなければ、能力向上のスタートラインにも立てません。能力と自信とのギャップがどんどん広がり、せっかくの成長の芽をつんでしまいます。若い人に多く見られるのが残念でなりません。

では、どうして能力が低いのに、自信だけが過剰なのでしょうか。本人の性格や育ち方もありますが、それだけではないのが人間の面白いところです。

原因を探るために、一つ皆さんに質問したいことがあります。自分の仕事の能力は、平均以上だと思いますか?

この質問、何度か企業研修などで試してみたのですが、なんと7~8割の人が「イエス」と答えるのです。そんなのあり得ませんよね。単純に考えれば、イエスとノーで半々になるはずですから。

つまり、人は誰しも、自分の能力を過大に評価する傾向があるのです。しかも、能力が低い人ほど、その傾向が強いというから驚かされます。

イグノーベル賞を受賞した心理法則

そのことに気づいた心理学者のD.ダニングとJ.クルーガーは、学生たちに実験をしてみました。ユーモアのセンスや論理思考を問う問題を出し、それぞれ自己評価をしてもらいました。その後で、「あなたのレベルは、同世代の人と比較して、どのあたりのポジションにあると思いますか」と尋ねたのです。

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