ひらめきブックレビュー

無くし、減らし、代用せよ 生産性を上げる鉄則を知る 『知的生産術』

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政府主導で働き方改革が進められている中で「いかにして仕事の効率を上げられるか」に悩むビジネスパーソンは少なくないはずだ。例えば、上司から与えられる仕事の量は変わらないのに「残業するな」と言われる。どうすればいいのだろう?

そんな悩みや疑問にスパッと答えてくれるのが本書『知的生産術』だ。著者の出口治明氏はライフネット生命の創業者で、多数のビジネス書や歴史解説書の著者としても知られる。2018年1月の立命館アジア太平洋大学の学長就任も話題になった。

本書には、出口氏のこれまでの豊富な経験をもとにした「知的生産」の手法やノウハウが、惜しげもなく公開されている。読んで実践すれば、長時間かけてダラダラ続けていた仕事にメリハリをつけて、短時間で成果を出せるように変えられる。そして、プライベートも充実させながら日々楽しく働けるだろう。

■飲み会の日に急ぎの仕事が入ったら…

では、出口氏の言う知的生産とは何だろうか。本書での定義は「自分の頭で考えて、成長すること」だ。

例えば、夜に飲み会の予定があるのに、夕方に急ぎの仕事を上司から命ぜられる。普通にやっていたら、飲み会に参加する時間はなくなる。

この場合の選択肢は2つ。飲み会参加をキャンセルするか、仕事を早く終わらせるか――。普通なら前者を選ぶかもしれない。だが、あえて後者を選ぶ。頭を使ってやり方を工夫し、仕事の質を落とさずに短時間で完成させる。これこそが知的生産だ。

つまり、知的生産の「知的」とは「自分の頭で考える」ことを意味する。常識にとらわれず自分で考えて工夫し、同じ仕事をより短い時間でこなす、あるいは同じ時間でたくさんの量をこなす。さらに同じ時間で仕事の質を高める。この3つができれば確実に成果が上げられ、成長できる。

■振られた仕事はそのまま引き受けない

本書には生産性を高めるための具体的な手法が多数紹介されている。その一つが、出口氏の提唱する「無減代」というルールだ。無・減・代の三要素を仕事のプロセスに取り入れる考え方で、「無」は仕事を無くすことを意味する。例えば。上司が明らかに思いつきで仕事を振ってくる。そんなときは、そのまま引き受けずにその仕事が本当に必要なのかを確認しよう。そこで上司が仕事を振るのを撤回すれば、その仕事を無くすことができる。

「減」は文字通り仕事を減らすこと。「10枚で資料を作れ」と言われたら、2、3枚でまとめられないかを考えてみる。時間と労力が減らせる上に要点をまとめるスキルが身につくはずだ。最後の「代」は代用だ。自分が以前作った資料を使って代用できないかを考える。

本書には他にも「目からうろこのヒント」が満載だ。けれども、これらをうのみにすればいいというものでもない。個々に合ったものを試しながら、自分なりに工夫すること。そうすれば、間違いなく「知的生産の達人」に近づける。

今回の評者 = 高橋北斗
 情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」エディティング・チームの一員。東京都出身。早大卒。

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