生活習慣病などと因果関係が深いとされる要素を分析すれば、同じ年齢・性別でもリスクに差があり、保険料にも差をつけられるとの発想が支持され、加入者も増加した。

ただ健康体割引は、加入時に健康状態が良好な人にとっては魅力的に映るが、健康に不安がある人はメリットを見出しづらく、加入者の広がりには限界があった。

健康増進型保険は、こうした従来商品の課題を踏まえて開発された。

契約時の健康状態だけではなく、契約後の健康増進にも着目。努力して健康状態が改善すれば、保険料の割引やキャッシュバックなどの特典が受けられるようにした。現時点の健康状態は良好と言えなくても、改善する意欲を持つ人に関心を持ってもらうのが狙いだ。

また国内の平均寿命(17年)は男性が81.09歳、女性は87.26歳と、医療技術の進歩により長寿化が進んでいる。ただ自立した生活を送ることができる「健康寿命」(16年)は男性が72.14歳、女性は74.79歳にとどまり、その差はなかなか縮まらない。

「保険加入をきっかけにして、健康増進に取り組む人を増やす」との発想は、社会的にも理解を得やすい商品コンセプトといえそうだ。

保険会社、ビックデータ獲得のチャンス

もちろん、保険会社側の事情もある。長引く低金利などにより、終身保険や学資保険などの「貯蓄型保険」で魅力的な新商品を開発することは年々難しくなっていた。新商品開発の重点が医療保険に向かうなか、他社と違いを出すのに健康増進型保険はうってつけだったというわけだ。

健康増進型保険が普及すれば、保険会社が加入者から直接、契約後の健康データを取得することができる。健診結果などを定期的に入手することができれば、より精密なリスク予測ができるようになるかもしれない。加入者が増加すれば、保険会社にとっては健康関連のビッグデータを獲得する絶好の機会にもなりそうだ。

年齢や加入条件に注意を

様々なメリットがある健康増進型保険だが、注意点も多い。ファイナンシャルプランナーの竹下さくら氏は「健康増進型保険は万人向けではなく、向き、不向きが分かれる」と話す。

現在、発売されている健康増進型保険は、保険料「掛け捨て」の定期保険が主流だ。年齢や家族構成などから終身保険に加入した方がよい人が、無理に健康増進型を選ぶのは禁物だ。

保険料も、10年程度で更新されるタイプが多い。通常は、更新時の年齢に応じて保険料も上がる。このため健康増進型保険の割引やキャッシュバックを受けても、トータルの負担が軽くならないケースもある。

実際に、明治安田生命「ベストスタイル健康キャッシュバック」の対象はすべて更新型だ。第一生命「ジャスト健診割」の対象も更新型が多い。

健康増進型保険は、主に契約後の健康状態に応じて割引やキャッシュバックを提供する商品だが、「契約時の健康状態」も重要だ。

健康な人、不利な場合も

現時点で健康状態が良好な人の場合、健康状態をさらに改善することは難しくなる。その結果、「以前からある健康体割引の保険の方が、トータルの保険料が安くなることがある」(竹下氏)という。

住友生命「バイタリティ」や、ネオファースト生命「ネオde健康エール」などのように、保険契約後に健康状態が悪化すると、保険料が高くなる商品もあるので特に注意したい。

健康状態が現時点でかなり悪い人が恩恵を受けようとしても、現実には難しい。

健康増進型保険でも、契約時に既往歴などの告知が必要だ。保険会社の引き受け基準は、通常の保険とさほど変わらない商品が多い。このため、そもそも加入できない場合がある。

健康データを改善するためには、意欲だけではなく、実際の行動が欠かせない。このため竹下氏は「時間にある程度、余裕がある人が向いている」と指摘する。そのうえで健康増進型保険と相性が良いのは、「30代前後の若年層」(同)とみる。

現在の健康状態と、今後の改善可能性をよく吟味したうえで、契約前に割引やキャッシュバックを本当に受けられるのかを、冷静に考える必要があるだろう。

(堀大介)

[日経ヴェリタス2019年3月31日付]

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