2012/6/30

耳寄りな話題

フランスのリュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」=京都府京都文化博物館提供

では日本で初めて上映された「映画」はキネトスコープか、シネマトグラフか。試写をもって始まりとするのか、有料公開なのか。映画史が専門の大手前大教授、水口薫さん(63)に聞いた。「『映画』の定義は、単なる動く映像ではなく演出されていること。そして不特定多数が同時に楽しめることです」と水口さんは指摘する。

有料公開は大阪が先んじる

キネトスコープは1~2分の動画を繰り返すもので、しかも1人ずつしかのぞき込めなかった。一方、シネマトグラフはスクリーンに投影した映像を多くの人が楽しめた。水口さんによると「映画史では、シネマトグラフが『最初の映画』とされています」という。

さらに「映画生誕の地」は、シネマトグラフが発明されたフランス・リヨンではなく、初めて有料公開されたパリとされているという。「現在のような映画館の誕生こそ『映画の始まり』、というのが学問的な認識です」(水口さん)

京都は試写では大阪に先んじたが、有料公開は大阪より約2週間遅れて始まった。「日本映画発祥の地は大阪・難波」が正解なのだろうか。

「いや、何を重視するかで主張は異なるでしょう。映画に欠かせなかったフィルムが今ではデジタルに変わるなど、映画は変化し続けていることを忘れてはいけません」。水口さんは強調し、「日本映画は関西が発祥、でいいのでは」と提案する。

明治時代の関西は神戸港を拠点に、さまざまな欧米文化を東京や横浜に先んじて採り入れ、一味違う文化を醸成してきた。「日本映画の礎を築いた関西の3都が結束して、今の日本映画界も盛り上げてほしいものです」。水口さんはこう期待する。

(大阪社会部 近藤佳宜)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2012年6月27日付]

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