東京湾を知り尽くし、船を導くプロ 女性水先人第1号東京湾水先区水先人会 水先人 西川明那さん

最善のジャッジを支える健康と度胸

心がけているのはたくさんの人の話を聞くこと。この仕事は正解が一つでない上に、シチュエーションも毎回異なります。腕を磨くには数をこなすしかありません。まだ経験の少ない私にできるのは、話を聞き先輩方の経験をもらうことだと思っています。経験談を聞いていたおかげで対処できたトラブルがこれまでどれほどあったことか。先輩たちの話は大切なお守りです。

最善のジャッジを支えるのは、健康と度胸だという

「西川さんは度胸がある」と言われます。水先人の仕事はジャッジする場面が多いです。確かに度胸はあるほうかもしれませんが、決断を下すのはいつだって怖い。でもそれ以上に怖いのは、ジャッジできず頭が真っ白になってフリーズしてしまうことです。シニアと共同操船していた時に一度だけ何も考えられなくなってしまったことがありました。決められないことは危険に直結します。絶対に避けなければいけません。

常に神経を集中させ続けることは難しいですが、ここぞという瞬間にしっかり感覚を研ぎ澄ますこと。時には第六感のような動物的感覚に頼ることも必要だと思っています。いつでも最善のジャッジができるよう、健康と度胸は保ち続けたいです。

水先人となって8年がたち、乗船数も2000隻を超えました。2018年からは共同操船にシニアとして乗り込むようになり、後輩の操船をヒヤヒヤしながら見る立場になりました。

技を受け継ぎながら、新しい一歩を

現在、水先人の平均年齢は高く、毎年十数人が引退していきます。職人技ともいえる水先人の技術を多くの先輩方から受け取った世代として、これから何をどう後輩たちに伝えていけばいいのか考える日々です。

自分が経験した大変さをそのままそっくり渡すのではなく、自分の中できちんと咀嚼(そしゃく)して伝えていきたいと思うのですが、どうしたらいいのか正直、まだわかりません。まずは私がこれまでその場その場で仕事を教えてもらったように、日々の現場で伝えていきたいと思っています。

私はこの仕事が好きです。辞めたいと思ったことは一度もありません。今は二級水先人なので一級を目指しています。一級進級試験などの詳細は未定ですが、新制度三級入会第1期生のための進級養成課程に関しては、近々実施される予定と聞いています。準備だけは怠らず勉強していたいと思います。

待つばかりでなく自分たちもルール作りに参加しています。今後女性の水先人が結婚や出産を経ながら働き続けるための制度を整備中です。私自身この先どんな人生の岐路があるかわかりませんが、その時々で働き続けられる方法を探し、できるところまで水先人を続けたいと思っています。

取材後記

横浜市にある海辺の事務所で行われた今回の取材。目の前には横浜ベイブリッジが横たわり、海上には客船や貨物船が浮かんでいました。日本初の女性水先人の話を、と始まったインタビューでしたが、話を聞くほどに、水先人業界の大変革期の中で誕生した新時代の水先人であることに大きな意味があることがわかりました。就職活動を始めるタイミングでの法改正。巡り合わせともいえる西川さんの稀有(けう)なキャリア。海上輸送を通じて日本の経済を支えている水先人というプロフェッショナルたち。日本の水先人の未来と、西川さんのこれからの活躍に注目し続けたいと思いました。

西川明那
水先人(東京湾水先区水先人会)。東京海洋大学卒業後、新水先制度により、2007年に同大学が始めた水先人養成コースに第1期生として入学。11年、国家資格を取得し東京湾水先区水先人会三級水先人となる。15年から二級水先人。京都府生まれ。

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