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女性国内第1号の水先人である西川明那さんは世界屈指の難水域である東京湾を知り尽くす

女性国内第1号の水先人である西川明那さんは世界屈指の難水域である東京湾を知り尽くす

多くの船舶が行き交う東京湾エリアで、船に乗り込み、湾内の航行を助けるのは水先人の仕事だ。日本には35の水先区(水先人が業務を提供する水域)があり、670人余りが海上交通を支えている。女性国内第1号の水先人で、世界屈指の難水域である東京湾を舞台に活躍する西川明那さんに話を聞いた。

◇  ◇  ◇

水先人の仕事は、一言で言うと船長のアドバイザーです。船舶は世界中の港を行き来しますが、どれほど優秀な船長でも世界中のあらゆる港の特徴を理解し、刻々と変わる天候、その時に港を行き交う他の船舶の状況を把握することはできません。そこで、その海域のプロフェッショナルである水先人が東京湾の入り口で船に乗り込み安全に効率よく、港内へと案内します。

日本では水先人は所属する水先区が決まっています。それは、海面下に広がる海底の地形や水流が地域によって異なり、ひとつの海域を専門に取り組まなければ職務を全うできないほど専門性を求められる仕事だからです。なかでも詳細な水深の把握は必須です。免許取得にあたってはどの水先区で仕事をするかを決めて国家試験に臨みますが、その海域の詳細な海図を描ききらなければいけません。

法改正で未来が変わった

私が働く東京湾は航行する船舶の数と種類の多さで世界屈指。貨物船、タンカー、大型クルーズ船、米海軍船、プレジャーボート、漁船など、出入りしない船がないといっても過言ではありません。水先人の乗船が義務付けられていない船舶もあり、湾内はかなり雑多で、朝夕は特に混み合います。そんな東京湾では安全と効率の両立が求められます。

かつて水先人という職業は、豊富な航海経験を持つ船長達の第2の職場でした。免許取得の要件に「船長として総トン数3000トン以上の船舶に3年以上乗り込んだ経験があること」などが定められていました。しかし、2006年に水先法が改正され、船長経験がなくても免許を取得できる新しい道ができました。

新制度第1期生であることの大変さ

法改正された当時、私は海洋大学で航海士を目指し学んでいた大学3年生。その頃すでに女性航海士が活躍していたので、自分も航海士として船に乗って仕事をするか、または、深海の調査などを行う研究機関で陸上業務をするか、いくつかの進路を考えていました。そんな矢先、思いがけず「水先人」という選択肢が登場したのです。迷わず2年半の養成コースへ進みました。

養成課程を修了し国家試験を経て、新制度の第1期生として晴れて三級水先人のキャリアをスタートしました。東京湾では同期7人のうち、私を含めて2人が女性第1号の水先人です。ただしもう1人の女性は船に乗っていた経験者。船乗り経験なしで免許をもらった水先人で、しかも女性という初めて尽くしの私は「ここにいていいのだろうか」と思いながらも、とにかく頑張るしかありませんでした。

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