家賃滞納トラブルを解決 貧困と向き合う司法書士

家賃滞納が離婚や自己破産につながるケースもある。写真はイメージ=PIXTA
家賃滞納が離婚や自己破産につながるケースもある。写真はイメージ=PIXTA

「家賃滞納は、普通の人が堕ちる破滅への入り口である」――。『家賃滞納という貧困』(太田垣章子著、ポプラ新書)の帯にある言葉だ。著者は、現代日本社会を密かに着実にむしばみつつある「家賃滞納問題の深刻な現状」をリアルに描き、「あなたも明日陥るかもしれない」と警鐘を鳴らしている。

タイトルを見て「私には関係ない世界」と感じた人こそ読んだほうがよさそうだ。なぜなら、安定した仕事に就いていた、比較的高収入の人が家賃滞納に陥ったケースがいくつも取り上げられているからだ。

たとえば、大手企業勤務の一級建築士だったが、家賃滞納で家庭崩壊した人。誰もが知るメガバンクを定年まで勤め上げ、その後は余裕で海外旅行を楽しんでいたが、その「余裕しゃくしゃく」があだになり、気がつけば家賃滞納となった事例。高給で有名な大手広告代理店で実績を積んだ、絵に描いたようなエリートの転落話もリアルだ。社外のクライアントたちから腕を見込まれ、応援されて独立起業した30歳男性は「入りも多いが出も多い」のがフリーの現実と知らなかったのが悲劇を招いた。

お金のやりくりがちょっときついとき、「1回だけ」のつもりで、家計支出のうち、最も金額が大きい家賃をすっ飛ばしたら、「何だ、こんなに楽になれるんだ。消費者金融みたいな取り立てもないし」と、気が緩んだ。そのあげくに待っていたのは離婚と破産宣告だった。

「家賃滞納者からも慕われる司法書士」

家賃滞納の過酷な現場をいくつも紹介したうえで、「決して他人事ではない」と訴える著者の経歴はこう記されていた。

「30歳で乳飲み子を抱えて離婚。シングルマザーとして6年にわたり、ネズミが出没するアパートでの極貧生活を経て、一般事務職員として働きながら、司法書士試験に合格」「(16年間で)2200件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託」「滞納者からも慕われる異色の司法書士」

貧困を「(当事者と)同じ目線」で子細に語るシングルマザーとはいったい、どんな人なのか? 取材お願いの電話をすると、「すぐ伺いまーす」と、私の事務所まで来てくださった。

太田垣章子「父が昔気質(かたぎ)で、娘は学校を出たら、お見合いで結婚して子を産んでという人でした。姉は父の意に沿うように、大学を卒業すると見合いして、代々続く医家に嫁ぎました。私はそういう『優等生』になれませんでした」

彼女は関西の女子大入学後、作家の中島らもさんや漫画家のひさうちみちおさんなど、必ずしも「優等生」とはいえないメディア関係者たちとの交友を持ち、いつしか地元情報誌を舞台にライターとしての活動を始めていた。

太田垣「ある雑誌でインタビュー記事を担当し、阪神タイガースの掛布雅之さんや歌手の河島英五さんなど、いろいろな人に話をうかがいました。成功する人って、こうなんだって知る貴重な体験でした」

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