頼んだ仕事「聞いていません」 相手に伝わらないワケ第19回 選択的注意

水掛け論はなぜ起こるのか?

伝えたはずの話が伝わっていない。そのせいで、「あのときに言っただろう」「そんなの聞いていませんよ」の水掛け論になる。職場に限らず、日常生活でもよく見られる光景です。

ときには、「じゃあ、あすまでにね」と頼んだ直後に、「で、いつまでにやればいいの?」と質問されることもあります。しかも、本当に聞いてないような口ぶりで尋ねてくるので、イラッとさせられます。「さっき言ったけど、あすまでにね!」と嫌みっぽく返すしかありません。

こうなる理由は明らかです。話は耳に入っていたものの、別のことを考えていたのです。先走って次の展開を考えたり、メモに夢中になっていたり……。もらった資料を熱心に読んでいて、話をまったく聞いていないこともあります。言った・言わないの話は、たいていこのパターンです。

人が話すスピードよりも、聞くスピードのほうが断然速いです。だからこそ、録画したビデオを倍速で見ることができます。

聞くスピードよりさらに速いのが、考えるスピードです。そのため、人が話をしているときに、頭の中に空き時間ができてしまいます。つい別のことを考えてしまうのです。

ところが、天才でもない限り、私たちの頭はマルチに情報が処理できません。一つのことを考えると、他のことに注意がいかなくなってしまいます。その結果、大切な話を聞きもらしてしまうわけです。これが、今回のテーマである「選択的注意」です。

見えているのに気がつかない

選択的注意は脳の特性であり、聴覚のみならず視覚においても顕著に表れます。この現象を広く世に知らしめたハーバード大学の実験ビデオがあります。興味がある方は、「Selective Attention Test」で動画検索してみてください。

登場するのは白い服を着た3人と黒い服を着た3人の男女です。6人が動き回りながら、バスケットボールをパスし合います。

視聴者に与えられた課題は、白い服を着た人たちのパスの回数を数えることです。1分ほどでできるテストですので、まだやっていない方は、テスト後に続きをお読みください(やり方はビデオの中で指示があります)。

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