売り手市場、早期化に惑わされずに就活を
3月以降の就活スケジュール
いよいよ3月、就活解禁です。昨年以上に早期化が進んでいると言われる2020年卒業予定者の就職活動。すでに内定を持っている人も目立ち始め、焦りを感じている就活生も多いかもしれません。就活が本格的に始まる3月以降、どのように就活を進めればいいのでしょうか。
昨年より採用を早めている企業は1割?
キャリタス就活を運営するディスコが発表した2020年卒業予定者の2月1日時点の内定率は8.1%と、前年同月を3.5ポイント上回りました。この数字は前年の3月調査(8.0%)とほぼ同じ数字なので、現在の就活は19卒よりも1カ月ほど早いペースと言えます。この数字だけを見ると、「就活に出遅れてしまった」と不安に思う人もいるでしょう。でも、実際にはそんなに焦る必要はありません。当然、早めに選考対策などの準備を進めることは大切ですが、すべての企業が採用活動を早めているわけではありません。
ディスコが企業向けに実施した調査結果を見てみましょう。グラフは面接の開始時期と内定出しの開始時期になります。このグラフからわかるのは、「就活開始3月、選考(面接)開始6月」というスケジュールはほとんど守られていないことです。6月以降に面接を始めると回答している企業はわずか10.2%です。もし、「選考はまだ先」などと思っている人がいたら、考えを改めてください。
もう少し詳しくグラフ見てみましょう。面接の開始時期は「2月以前」が前年の7.5%から13.9%に、「3月上旬」が同6.4%から9.9%に増えています。次に内定出しの時期は「2月以前」が前年2.8%から6.1%に、「3月上旬」が同2.8%から4.9%、「3月中旬」が同2.4%から3.6%に、「3月下旬」が同5.6%から7.7%に増えています。
ここまで見ると早期化が進んでいると思えますが、それ以降では20卒が大きく上回ることはありません。面接を「2月以前」「3月上旬」に開始した企業が23.8%あり、内定出しを「3月下旬」までにする企業が22.3%あり、それぞれを前年同期と比較すると10ポイントほど増えています。つまり、10%程度が早期化していると見ることができます。3月中旬以降に面接を始める企業は昨年並みのスケジュールで進むのではないかと思っています。
エントリーシート提出は3月下旬に集中
それでは、これからの就活をどう進めればいいのか。ディスコの企業調査ではエントリーシート(ES)の受付開始は3月上旬が54.6%で最も多く、3月中には9割近くに達します。ESの結果通知は3月上旬から4月上旬にかけてが多く、4月下旬で9割に達します。
3月に入って説明会と同時にES提出が始まり、3月下旬に締め切りのピークを迎えるでしょう。「自己PR」「学生生活で力を入れたこと(ガクチカ)」「志望理由」の3大質問は、今すぐ400文字程度でまとめてください。余裕があれば600文字パターンなど、文字数別に複数用意しておけば、複数社の締め切りが同じ日であっても慌てずに済みます。また、就活生の皆さんが苦労する「自分らしい写真を使って自己PRしてください」というエントリーシートもありますので、ガクチカなど学生生活での過ごし方がわかる写真も準備しておきましょう。
ES提出と合わせて筆記試験の準備も急がなければなりません。筆記試験はES提出と同時かES通過後から1次面接までの間に受けるケースが多くなります。筆記試験の種類はSPI(テストセンター)、SPI(WEBテスト)、企業オリジナル試験、玉手箱が多い順なので、自信のない人はSPIと玉手箱は対策本で練習しておいたほうがいいでしょう。また、ES提出時にはWEBテストを課し、面接の途中でテストセンター受検を求める企業も増えています。
「面談」「模擬面接」も選考
次は最後の関門となる面接。エントリーシート選考を通過すれば、すぐに面接が始まります。早ければ3月、遅くとも4月にはどこかの会社の面接を受けることになるでしょう。面接回数は最も多いのが3回、インターン参加による早期選考、理系の推薦なら1、2回で終わることもあります。面接形式は1次面接では個人面接が60%、集団面接が25%、グループディスカッションが10%、残りがWEB面接などになり、2次面接以降はほぼ個人面接です(日経HR「2018年内定者調査」より)。3月中には大学のキャリアセンターなどで模擬面接を受け、自分の回答が相手に伝わるかどうかを確認してください。
面接で就活生を混乱させるのが「面談」です。昨年、生命保険会社から内定を得た男子学生は3月下旬にES提出、4月に上旬にWEBテストを受け、5月中に面談を3回受け、6月1日、2日に面接を受けて内定となりました。その学生は「あくまでも面談という説明を受け、担当は人事ではない社員だった。でも、いろいろと深掘りをされ、面接そのものと感じた」と振り返ります。面談の他にも模擬面接会など、面接とは違う言葉を使って学生を呼び出し、実際は面接と同じというケースも見られます。基本的には企業から呼び出されたらすべて選考だと思っていたほうがいいでしょう。
6月1日の選考解禁を待って面接を実施するのは商社やメガバンクなど一部の企業に限られます。1日から面接を始める企業は遅れた分を取り戻すように一気に面接を進めます。今年は1日、2日が土日ですが休まずに面接を実施し、7日までには内定を出すと思われます。
6月の最初の1週間で内定が出て就活を終える人もいますが、反対に持ち駒がすべてなくなって就活再スタートという人もいるでしょう。そうなったとしても決して諦めないでください。6月以降には内定辞退によって再募集を始める企業が出てきます。就活サイトの情報をチェックしたり、大学のキャリアセンターで求人情報を確認したりすることです。
ここ数年、就活生が有利な売り手市場が続き、内定率は過去最高記録を更新し続けています。3月の解禁前に複数の内定を持っている人もいれば、すでに就活を終えた人もいます。こうした「売り手市場」「早期化」といった状況に惑わされて焦ることなく、エントリーシート、面接でしっかりと自分の良さを採用担当者に伝えてください。そして、本当に自分に合った仕事、働き方ができるのかどうかを調べて入社する企業を選ぶことが就活のゴールになります。
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