上司はなぜイラッとした? 言葉使いの肝はふさわしさ
目上の気持ちを探ったり、評価を下したりする物言いは反発を買いやすい。 写真はイメージ =PIXTA
毎年、経団連が「新卒採用に関するアンケート調査」を発表している。今さらのようだが、志望者を選考する際に最も重視する能力は「コミュニケーション能力」だそうだ。2004年以来、「コミュ力」がトップでなかったことは一度もない。
直近2018年の調査でも、「コミュニケーション能力」は82.4%というダントツの数字で首位をキープした。チャレンジ精神(48.9%)、協調性(47.0%)、誠実性(43.4%)などをはるかに超える。
「グローバル化」がいわれる近年、外国語能力も重視されているのではと思い、結果を見たら「(外国語能力を)重視する」は6.2%。留学経験に至ってはたったの0.5%だった。企業がここまで重視する「コミュニケーション能力」とは一体、何なのだろう。
周囲の若い人たちに「『コミュニケーション能力が高い』で思い浮かぶ人は?」と尋ねたら、「マツコ・デラックスさん」「ソフトバンクの孫正義社長」「米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ」「聖徳太子」などの名前が挙がった。しかし、バラバラすぎてコミュニケーション能力の本質を知る手がかりにはならなかった。コミュニケーション能力は、思った以上にフワフワとしてとらえどころがなさそうだ。
コミュニケーションの4要素
試行錯誤の末、シンプルなインターネット検索で、2018年3月に文化庁文化審議会国語分科会から出された「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」に巡り合った。お役所文書的ではなく、かんで含めるような調子で語りかける、わずか77ページの報告が謎解きの助けになりそうな予感がした。
この報告はコミュニケーションを4つの要素で説明している。「正確さ」「わかりやすさ」「ふさわしさ」「敬意と親しさ」の4つだ。
このなかの「ふさわしさ」という概念こそ、採用試験で重視される「コミュニケーション能力」に直結するのではないか? 読み込むうち、ひらめきは確信へと変わった(以下、私の思い込みにしばらくお付き合いください)。