IWC、日本なぜ脱退? 強まる反捕鯨色を疑問視

――そもそも日本でクジラの肉は人気があるの?

年間で500万トン近くにもなる三大食肉(牛豚鶏)の消費量に対し、クジラの消費は年4千~5千トン程度にすぎません。牛肉や豚肉が貴重だった時代は、クジラの肉は大切なたんぱく源でした。ですが91年の輸入自由化で牛肉が潤沢に出回るようになるなど、食卓の風景は変わりました。

もちろん先に述べた太地町や山口県下関市のように、クジラの食文化が根付いている地域もあります。ですが商業捕鯨が再開されたからといって、全国的にクジラの消費量が急に増えるとは思えません。

――どんなメリットがあるのか分かりにくいわね。

7月に商業捕鯨を再開した時、その映像を見て世界でどんな反応が起きるのか、予想ができません。日本が加盟する国連海洋法条約では、クジラは国際機関を通じて管理することになっており、今後の対応によっては他国から条約違反だと訴えられる可能性もあります。また日本はマグロやウナギ、サバなどの資源管理を各国にうったえていますが、商業捕鯨を再開すればこうした活動に悪影響が出かねません。

混乱が広がれば、環境保護に熱心に取り組んでいる大手スーパーなどは、店頭でクジラを扱うのをますますためらうかもしれません。

日本政府が主張するように、IWCの運営におかしな点があるのは否定できません。過去にIWCから脱退した国も珍しくありません。日本のクジラの伝統文化を守ることも大切です。ただし、脱退によるマイナスの面が多いのも間違いないでしょう。

ちょっとウンチク

先住民には捕獲の権利

国際捕鯨委員会(IWC)は1982年に商業捕鯨の一時停止を決め、現在まで継続している。ただ、その捕鯨規制には例外もある。

80種以上いるクジラ類の中でIWCが管理対象とするのはシロナガスクジラなどの13種(新種判明を加味すると17種)に限られる。日本が沿岸でツチクジラや小型のイルカ類を捕獲できるのはIWCの管理対象種ではないからだ。

イヌイットなどによる捕鯨も「先住民生存捕鯨」として認められる。米国やロシアはこの先住民生存捕鯨によってIWC管理対象種であるホッキョククジラやコククジラを多く捕獲している。(編集委員 志田富雄)

■今回のニッキィ
鬼頭 美保子さん 主婦。旅行が趣味で、ここ数年は毎年南米を訪れている。片道2日ほどかかる長旅だが、密林や砂漠など各地で写真撮影を楽しむ。「手付かずの自然にすっかりはまりました」
安藤 みゆきさん IT関連企業勤務。歩くのが大好きで、最近は都内の日本橋周辺などを散策して、街の片隅に残る江戸期の石垣などの遺構探しを楽しむ。「意外な発見があって面白いですよ」

[日本経済新聞夕刊 2019年2月18日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。

次世代リーダーに必要な3つの要素を身につける講座/日経ビジネススクール

若手・中堅社員向け!ビジネスの現場ですぐに役立つ実践講座

>> 講座一覧はこちら

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら