医師の過労どう防ぐ スタッフへの業務移管で残業減

医師の長時間労働は深刻だ
医師の長時間労働は深刻だ

いよいよ4月から残業規制が始まるわね。でも医師は5年間は対象外だって聞いたわ。医師の働き過ぎ防止策は必要よね。ただ、病気になったとき、ちゃんと診察を受けられるのかも心配です。

医師の残業規制や課題について、内田厚子さん(68)と菅原直美さん(41)が石塚由紀夫編集委員に聞いた。

――なぜ医師は5年の猶予が置かれたのですか。

医師も過労死が後を絶たず、過重労働の防止策は必要です。ただ医師は人の命を守るという特殊な職業。一般的な雇用者と同様の上限規制を適用しては十分な医療サービスを提供できなくなる恐れがあり、仕組みや対策を慎重に検討する時間を設けました。

例えば、医師には「正当な事由がなければ診療を拒めない」という「応召義務」が医師法で課せられています。残業時間が上限に達した月に会社員は「これ以上、働けません」と断れても、医師には許されません。法制度のこうした矛盾も調整が必要です。

上限は2018年度末までに固める計画です。規制案を議論する検討会に厚生労働省は1月に原案を示しました。時間外労働の上限を原則年960時間とし、医師不足が深刻な地方の医療機関などには特例として年1900~2千時間の時間外労働を35年度末まで認める案です。

ただ検討会では反対意見が出ています。4月以降、一般的な雇用者に適用する上限規制は原則月45時間以内、年360時間以内。特別な事情があっても月100時間、年720時間を超えてはいけません。これらを大きく上回っており、医師の過重労働が防げない懸念があるからです。

――医師はどれほど長時間働いているのですか。

厚労省が検討会に提出した資料では、週60時間以上働く勤務医は全体の4割を占めます。時間外労働は年約960時間以上で、原案通りでも勤務医の4割は残業を減らすなど働き方を抜本的に見直す必要があります。総務省の調査で週60時間以上働いている人の割合を職業別にみると、医師は42%と全職種平均(14%)を大幅に上回り、長時間労働が常態化しています。

その原因を医師に尋ねた調査によると、診断書やカルテなどの書類作成、救急や入院患者の緊急対応、患者・家族への説明対応が上位に並びます。最善の医療を提供するには先端技術や知識の習得に努めなくてはならず、自己研さんと仕事の境界があいまいなことも一因となっています。

18年、医大が女性の合格者数を意図的に抑制していた問題が発覚しました。背景には長時間労働に耐えうる男性医師を現場が求めているという事情もありました。医師の過重労働是正は優秀な人材を確保するためにも不可欠です。

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