ゲノム編集で子どもが誕生 なにが問題なの?

ゲノム編集による遺伝子改変技術はイネの苗にも応用されている(茨城県つくば市)
ゲノム編集による遺伝子改変技術はイネの苗にも応用されている(茨城県つくば市)

中国の研究者が2018年11月、遺伝子を手軽に改変できる「ゲノム編集」技術を受精卵に施し、双子を誕生させたと発表したわね。安全と倫理の両面から問題視されているようだけど、今後どうなるのかな。

生命の設計図を操るゲノム編集の課題と可能性などについて、小沢麻里子さん(51)と佐藤香織さん(37)が安藤淳編集委員に聞いた。

――中国の研究者の発表は本当なのでしょうか。

中国・南方科技大学の賀建奎副教授は香港で開かれた国際会議で、エイズにかかった男性の精子と、感染していない女性から得られた受精卵の遺伝子を改変し、双子を誕生させたと発表しました。子の感染リスクをなくすのが目的です。健康な子が欲しいという両親の希望に応えることができ、「誇らしく思う」と語りました。

賀氏が使った「クリスパー・キャス9」という技術は、専用キットを使えば高校生でもゲノム編集ができます。動植物のゲノム編集は盛んに実施され、不妊症を解明する目的でヒト受精卵をゲノム編集した例もあります。ただし、受精卵を母胎に戻した実験はなく、ましてや子を産ませたという報告は初めてです。双子の体温や血圧、心拍のデータなどは不明ですが、広東省の調査グループは子の存在を確認したといいます。

――本当だとしたら病気を防げるのはよいことだわ。問題はどこですか。

まず、受精卵の遺伝子をいじるという行為の重大さを考える必要があります。受精卵や精子、卵子といった生殖細胞の遺伝情報は、子や孫に受け継がれます。影響は未来永劫(えいごう)続きますが、後の世代に対する責任を、だれがどう取れるでしょうか。

今回は病気を防ぐためにゲノム編集を使いましたが顔立ちを整えたり、スポーツ、芸術の能力を高めたりする目的で踏み切る人も出るでしょう。「優れた人間」を作り、ほかの人を駆逐する優生思想の社会につながる技術の暴走は倫理的に許されません。

クリスパー・キャス9の技術は新しく、狙った場所以外の遺伝子にも変化を起こす場合があります。エイズ感染を防ぐための遺伝子改変で、西ナイル熱など他の病気にかかりやすくなるとの研究もあります。そもそも、精子の洗浄などによってエイズ感染は防げるので、ゲノム編集の必要性に大きな疑問が出ました。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧