ひらめきブックレビュー

言語・物理・数学・アート 4つの学びが人生を豊かに 『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』

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「人生100年時代」に関する議論が盛んだ。100歳まで生きるのが当たり前になる時代がやってくる。そうなれば「人生80年」であった時代とは違う"新しい生き方"が必要になるだろう――という議論である。ではその新しい生き方とは何なのか。

これからの時代を生きる人にとって重要なのは「新しい学び」である、とするのが本書『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』。"現代の魔法使い"とも呼ばれるメディアアーティスト、筑波大学准教授である著者が、自らの生い立ちや子育て体験を交えながら、学び続けることの大切さ、そして生涯にわたって学び続けるための手法を語っている。

■学ぶことをライフスタイルにする

人生100年時代で大切なことは、学び続けることだ。現在のテクノロジーの進化スピードや社会の変化は今後も激しさを増すだろう、と著者はいう。かつて学んだことはすぐに古びてしまうため、これからは常に新しい分野の知識を吸収することが求められるのだ。そこで、学ぶことそのものを"ライフスタイル"にするような戦略が必要になる。

著者は、これからの時代を生き残っていくための手段の一つとして「複数の趣味を持ち、仕事にしていくこと」と勧めている。好きなことならば高いモチベーションが維持できる。新たなことを学ぶ際にもストレスなく、自然体で取り組めるだろう。趣味、すなわち「やりたいことがある」こと自体が、人生100年時代には大きな武器となるのだ。

■人生100年時代の学びに必要な4要素

さらに、これからの時代に必要な4つの要素として、著者は「言語」「物理」「数学」「アート」を挙げている。

例えばリンゴを言語的なアプローチで捉えると「りんご、林檎、apple」。物理的アプローチでは、赤リンゴと青リンゴの色の違いを光学的に考える。数学的アプローチではリンゴの形を関数で表し、アート的アプローチでは印象を絵画で表現するなどが挙げられる。

これらの4要素はこれまでの日本の教育では培ってこなかったものだ。だが、この4要素はこれからの時代に必要な"新しい学び"のスキルにかかわっているのだと著者は説く。

新しい学びとは、つまるところ「問い続ける」ことだ。自ら課題を発見し、その解決に実践的に取り組みながら、学び続けることである。そのような学びの手法を身に付けることで、めまぐるしい時代の変化に対応しながら柔軟に生き抜くことができるのだ。

生き方、考え方について多くのヒントにあふれた一冊。著者のこれまでの本のなかでもわかりやすく平易に書かれているようだ。若い世代も現役世代も、ぜひ手にとっていただきたい。

今回の評者=安藤奈々
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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