エンハンシング効果を効かす

だったら、「リーダーシップ力がある」「分析力が高い」と、能力や才能を褒めるのはどうでしょうか。実は悪い影響が出る恐れがあり、あまり感心できません。

褒められて能力に対する自負心を持つと、失敗を恐れるようになるかもしれないからです。挑戦を避ける傾向が生まれ、やる気が下がっているような態度を取りかねません。

また、思うような成果が出なかったときに、現実を受け入れ難くなります。ごまかしたり、繕ったりする恐れもあります。失敗を恐れて緊張してしまい、かえって成果を落としてしまう人が出ないとも限りません。不用意な声掛けでこうなったのでは、本末転倒になってしまいます。

それに、仕事の成果は、本人の能力だけでは決まりません。周囲の協力や環境の変化など、本人以外の要素も大きく作用します。能力だけを評価すると、それらの恩恵を忘れがちになります。

そもそも、能力は生まれつきで決まる部分が大きく、変えるのは容易ではありません。褒められたからといって、急に向上するものではありません。

かたや、努力や工夫は頑張り次第でいくらでも増やすことができます。周囲からポジティブな反応がかえってくると、「もっと頑張ってみよう」「自分にはできるはずだ」という気持ちが生まれてきます。内的動機づけの元になる自律性や有能性が高まるのです。これを「エンハンシング効果」と呼びます。

努力が成果に結びつけば、周囲との関係性もさらに深まり、さらなる内発的動機づけにつながります。努力をたたえることは、本人にとって周囲にとっても理にかなっているわけです。互いの努力と貢献を素直にたたえ合えるチームを目指していくようにしましょう。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

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