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梶原しげるの「しゃべりテク」

若手が走る「さみしさ離職」 薄い人間関係にリスク

2019/1/24

仲間同士の「つながり」に慣れた若者に孤独はストレス要因となりがちだ。 写真はイメージ=PIXTA

「大学卒業から3年以内の離職率3割」が改善される兆しは、まだ見えてこない。離職の原因として指摘されているのは「過重労働」「仕事に見合わない賃金」「パワハラなどの職場環境」などだ。しかし、私の周囲で早期退社する人たちの声を聞くと、統計には表れにくい「情緒的な理由」を挙げるケースが意外と多い。

たとえば、「さみしかったから」もそのひとつだ。自ら望んで入った会社を「さみしかったから」で辞めてしまうなんて、「甘えるのもいい加減にしろ!」と思わなくもないが、最初に入社した会社を4年弱で辞めた20歳代後半の彼から話を聞いて、「なるほどなあ」と共感してしまった。

■家探しで最初のつまずき

彼が大学を卒業して働き始めたのは東日本にある中堅電機関連企業。大学で学んだ分野を生かした専門職に就きたいと試行錯誤した結果、やっと勤め先を決めたと聞いた、年の離れた我々「オヤジグループ」が東京・新宿の焼肉店で祝ったものだ。

人なつこい彼は、いつの間にか飲みの席に紛れ込み、気がついたら我々の「デジタルトラブルの解決役」として欠かせない存在となっていた。夜中に書き上げた原稿を送信しようとした瞬間にデータが消えた、なんて私の「迷惑な電話」にも、嫌な顔をしないで、辛抱強く付き合ってくれた。彼が社会人になって遠くに行ってしまうのは残念だと、落ち込むメンバーが出るほど、彼は頼りにされていた。

そんな彼が希望して入社した「きちんとした会社」を「早々と辞めた理由」は何だったのか。聞いて驚いた。

「合格通知に胸を躍らせ、入社手続きのために出掛けたんです。現地に向かう新幹線の中でもウキウキでしたね、新しい町でどんな暮らしが待っているのかと」

都会育ちの彼にとって、自然の豊かな場所に建つ、広々した研究施設を前にしたのだから「揚々たる夢」が広がったことに疑いの余地はない。親元を離れた一人暮らしも初体験。「楽しみだなあ」と期待していたのだが、新人4人を「担当」する30歳代の上司に一瞬、「?」と思った。

「住まいはどのあたりを選んだらよいのでしょうか?」

上司「一応、地元の不動産屋のリストも用意しましたが、ネットで検索して検討されると、よいかもしれません」

この「丁重な物腰」に、「よそよそしいなあ」と違和感を覚えた。

■車がない、つきあいもない

ネットでチャカチャカ適当に選んで、会社まで一番近い、歩いて15分ほどの、「築浅、駐車場付き、1LDK5万円」の物件に決めた。

「車を持っていないから、駐車場は不要だけど、5万円だし。ま、いいか」。ほどなく、彼は車を持たないという選択肢があり得ない街に住むことを理解した。

職場は整理整頓され、仕事も思った以上にやりがいを感じた。

「ああしろ、こうしろ、こんなことも出来ないのか」と騒ぐ、パワハラまがいの先輩や上司がいないのはありがたかったが、「君、今年入社? 出身は? この職場どう?」などと、声を掛けてくる先輩も、「じゃあ、飯でも食いに行くか」と誘ってくれる人も現れなかった。

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