日によって入場料が変わる。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が2019年1月10日、チケット価格を変動制に切り替えた。レゴランド・ジャパンも18年夏、割安な入場料を導入。年中一律の料金から、繁閑差を反映した料金体系へ。特集の第4回は、激変するテーマパークの価格戦略を追う。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは1月10日、繁閑差を反映した料金体系を導入した
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは1月10日、繁閑差を反映した料金体系を導入した

 一夜明けて7900円が7400円に──。USJの1日券「1デイ・スタジオ・パス」(12歳以上の大人料金・税込み)が1月10日、前日比で500円値下がりした。

 値下げに踏み切ったのは、過去の傾向から、正月明けは人出が鈍ると見たからだ。いわば、需要喚起の一手である。しかし、値下げは長く続かない。2月1日から8200円とむしろ以前よりも値上がりし、春休み期間の3月23〜31日は8700円とさらに跳ね上がる。一方、同じ春休みでも4月に入った途端、需要は減る傾向があり、4月1~8日は8200円と春休み前の水準に戻し、4月9日は7400円とさらに下げた。

USJの1日券の大人料金(1月10日以降)。常に3カ月先の料金を開示している
USJの1日券の大人料金(1月10日以降)。常に3カ月先の料金を開示している

 現在、オープンになっている価格は、上記の通り、7400円、8200円、8700円の3段階にとどまる。需給に応じて価格を上下させるという意味では、ダイナミックプライシングの概念を導入しているものの、現状ではシーズン料金の域を脱していない。スポーツのチケットやホテルの宿泊料金のようにAI(人工知能)を駆使し、毎日きめ細かく、かつダイナミックに価格を変えるには至っていないが、年中一律料金が根付く日本のテーマパーク業界で、チケット価格を変動させる決断を下したのは極めてエポックメーキングだ。

 実は運営会社のユー・エス・ジェイ(大阪市此花区)も、まだ価格をこの3種類に限ったわけではない。髙橋丈太広報室長は「開始してみて、どういうプライシングが適切なのかを見極めたい。需要次第では、さらに(価格を)上げることもあり得る」と明言する。

 「理想としては毎日、その日に適した価格を設定したい。しかし最初からそれをやると、(価格体系が)複雑で分かりにくい」(髙橋氏)。まずはパッケージツアーの料金体系のように、ある程度まとまった期間で価格を固定する形に着地した。

 USJでは今後、3カ月先のチケット価格を、日めくりカレンダーのように1日ずつオープンにしていく。例えば、1月10日には4月10日の価格が明らかになり、翌1月11日には4月11日の価格が公開される仕組みだ。

 そもそも、なぜチケット価格を変動させようと思ったのか。第1に「(チケットが)ワンプライスであることが、必ずしもゲストの満足度を高めているとは限らない」(髙橋氏)という現状認識があるからだ。

 映画『ハリー・ポッター』の世界観を体感できる「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が成功し、根強いリピーターを獲得したUSJは16年、年間入場者数で東京ディズニーシーを抜き去った。ユー・エス・ジェイが米メディア大手コムキャストの完全子会社となった17年以降、正式な入場者数は公表されていないが、少なくとも年間約1500万人を集める、世界でも指折りの人気テーマパークに成長した。

 しかし、客足が伸びるにつれ、特定の日に来場者が集中するようにもなった。例えば、肌寒い1月の平日と春休み期間中の3月下旬では「人出は雲泥の差」(USJ)だ。特にハロウィーン期間中は、USJが「キャパシティーの限界」と見る1日10万人に迫る日も出てきた。これだけの人が入場すると、パーク内をゆっくりと巡るのは困難になる。可能な限り繁閑の差を平準化すべく白羽の矢を立てたのが、ダイナミックプライシングの手法だった。

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