ライフコラム

梶原しげるの「しゃべりテク」

古民家移住の案内人 夫の故郷・甲州で受け入れを支援

2018/12/27

■すれ違うニーズ、取り壊しが相次ぐ

翠さんが山梨に移住した当時、「あ、あそこの丘の上の古民家、素敵!今度お話に上がろうかしら」と思っていた物件が、あっという間に解体され更地になってハウスメーカーが建築する「普通」のお家として立て替えられた光景を何度も目撃したそうだ。

都会の人から見れば「宝物」のよう見える古民家も、実際に住む人にとっては、見方が異なって当然だろう。バリアフリーで、オール電化、各部屋がきちんと分けられている、ハウスメーカーが提供する「普通の家」に住みたいという気持ちも分からないではない。便利さを優先するなら、そう考えて当たり前だ。

「あなたがお住まいの300年近い風雪に耐えたこの家は、今では古民家として都会人垂涎の的なんですよ」などと都会者がしたり顔で伝えるのはおこがましく失礼だ。とはいえ、「欲しい」という人がいて「いらない」という人が存在するなら、その間を上手に取り持つ存在が居てもいい。それが翠さんたちの会社の一つの役割だ。

移住以来、翠さんは、こまめに都会の人たちに「田舎暮らし体験」としての「のら体験」「地元商店街巡りツアー」「都内でのセミナー」など、多種多様なイベントを精力的に提供している。

「都会と地元、人と人との交流」の機会を増やし、都会の人は地方の現実を理解し、地方の人は都会の人の気持ち理解する。そんな交流の場づくりでのおかげで、自然な人間関係が形成されていき、両者の本音が語られ始める。

都会の人「上がらせていただいていいですか」

地元の人「どうぞどうぞ、実を言うとね、私ら、もっとこじんまりした家にすみたいなって思うの」

都会の人「はい」

地元の人「で、そういうあなたがここに住みたいというなら。うーん、大事に住んでくれる?」

都会の人「もちろんです」

なんて会話から、話がグッと前に進むこともありそうだ。

■江戸期木材の高いクオリティー

何も手を入れずそのまま住める古民家物件は少ないらしい。翠さんは何件ものリフォームの現場に立ち会ったそうだが、30年、40年前に補修した部分がひどく朽ち果てている一方で、200年前の木材で何のダメージも受けていない立派な姿を目にして感動したことがあるという。

「江戸から明治にかけて使用された木材は、じっくり時間を掛けた天然乾燥のせいもあり、劣化が進んでいない。近年の主として機械的な乾燥で短時間処理を施したケースを見ると、時間を掛けられた時代のすごさをあらためて実感しますね」

古民家は外観の「伝統的な厳かさ」だけでなく、家を構成する柱、梁、囲裏周りの板など「地元のひとには当たり前」なものに都会の人は目を輝かせる。

間仕切りを取っ払い、囲炉裏を中心に集まればあっという間に集会場のできあがり。古民家の囲炉裏端が都会と地元をつながる「社交の場」になることだって夢じゃない。

こんな場づくりのため、かつて世界60カ国を飛び回っていた翠さんは、夫の桃田さんと県内を走り回っている。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜掲載です。次回は2019年1月10日の予定です。

梶原しげる
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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