出世ナビ

梶原しげるの「しゃべりテク」

古民家移住の案内人 夫の故郷・甲州で受け入れを支援

2018/12/27

古民家の魅力にひかれて、都会からの移住を望む人が増えてきた。写真はイメージ=PIXTA

「古民家鑑定士」として活躍する豊岡翠さんは早稲田大学を卒業後、旅行会社に就職した。海外セクションに7年間所属し、南米、アフリカ、ヨーロッパなど、世界60カ国を飛び回る多忙な日々を過ごしていた。

古民家鑑定士になるきっかけは、夫の故郷、山梨県甲州市への「移住」だった。甲州市といえばワインで有名な勝沼や果物の名産地、塩山があり、東京からも比較的近い。

東京で税理士として仕事をしていた夫の実家は地元で長く不動産業を営んでいた。「そろそろ親孝行を」という彼の希望と、翠さんの「そろそろ新しいチャレンジを」という期待がピッタリ合った絶妙のタイミングだったらしい。2人は荷物をまとめ、甲州市へ向かった。

息子夫婦の「Uターン」を満面の笑みで迎えた両親は、商売柄「若い2人には今流行の、使い勝手抜群の快適な住まい」を用意するつもりだったが、2人が選んだのは、よりによって両親が物置代わりに使っていて、近近取り壊す予定だった、ひどく古びた一軒家だった。

■圧倒的な広さ、古木の味わい

「足を一歩踏み入れたら、中は砂とホコリだらけ。クモの巣がそこここに。でも、さらによく見たら、見事なまでの太い大黒柱が鈍い光を放ち、天井は高く、その上に明かりとりの窓が見え、その先の一段上にもう一つ屋根があった。『わー、あれって、お月様?これってすごい!』となって」

異次元空間に放り出されたような、圧倒される感じが実に心地よかったらしい。

「ここに住みたい。住むんだっ!」

息子夫婦が「倉庫を家に選ぶ」など、40年以上も不動産業に携わってきた義父の予想を超える事態だった。

この「古屋」が実は250年前、江戸の中期に立てられた「甲州兜(かぶと)作り」という古民家で、「天井の先の部屋」というのは養蚕が盛んだった時代に蚕の飼育に欠かせないスペースだったと、翠さんは後に知ることになる。

「わざわざこんな古ぼけたきたない家に住まなくったって」とあきれた様子の義父だったが、最終的には、嫁の願いを聞き入れ、水回りの改修や、風穴の補修、断熱材での補強など、知り合いの業者に頼んで「住める最低限の環境」を調えてくれた。

「これ、どのくらいの広さですか」

義父「家に続いて蔵があり、その先に馬小屋があるから、それを含めると、かなりの広さだねえ」

お父さんでさえ明確な広さを即答することはできなかったらしい。それほどの広さ。東京ではまず味わえない。これも古民家の魅力の一つなんだろう。

実際にそこで暮らし始めると、思った以上に住み心地がよかった。東京にはない開放感を満喫して、すっかり古民家の魅力にやられてしまった。

「大黒柱の、真っすぐすぎない自然なカーブが素晴らしい。すすけた感じや建具の傷、ゆがみは欠点というより、むしろ先祖代々、使い込まれてきたからこその味わいを感じさせるんです。囲炉裏なんか20人近く座れるわ。お友達増やさなきゃ。ここにしてよかったあ。部屋のモノクロームなトーンにも癒やされます。風通しがよく、盆地特有の夏の暑さも、この家の中だとなんともない。私の選択は正解でした」

出世ナビ 新着記事

ALL CHANNEL