「サービスなってない」 テレビ出演、大混雑で裏目に「サイゼリヤ」創業者 正垣泰彦氏(9)

ですが、加工工場を建てる調査を進めると、店舗に運んで戻ってくるまで8時間以上かかることが分かりました。これでは今の技術では鮮度良く運べない。やむなく「今建設するのは難しい」と泣く泣く伝え、埼玉県吉川市に加工工場の用地を取得しました。

地元からは「やっぱりうそだったか」との厳しい言葉をいただきました。「10年待ってくれ。10年後には必ず戻ってくるから信じてくれ」。地元の人を裏切る訳にはいかなかった。ちょうど10年後の2001年に約束通り農業と工場用の土地を取得。改めて構想の実現に動き出しました。

店舗数が100店舗に達した94年、「飲食業の仕掛け人」というテレビ番組の出演依頼が舞い込みました。宣伝だと良かれと思って出ましたが、翌日、店舗に長い行列ができて苦情も殺到。対応にてんてこ舞いになり、忙しすぎて接客がなおざりになってしまいました。これがまずかった。

PR露出が逆効果、懸命の巻き返し

サービスがなっていないとお客さんが感じ取り、テレビの反響が収まるとぱったり来なくなりました。年が明けてもお客さんは戻ってこない。利益は大きく落ち込み、20億円達成すれば上場という水準からは遠ざかる一方です。「これじゃあ、とても上場なんかできませんね」。ついには証券会社からも見放されかねない土俵際まで追い込まれました。

信用を取り戻すために全ての食材を一から見直すことに。イタリアへの視察旅行を通じて、質の高い食材の情報が集まっていました。「メニュー表に載せる値段はそのままでいい!」。価格は据えおいて質を高めれば、きっとお客が戻ってくるはずだ――。

料理の食材を見直したことは一切宣伝しませんでした。それでも食べたお客さんの口コミが広がり、客数が3割も増えました。ようやく目標の20億円に向けて再び上昇基調を描き始めることに。まさに崖っぷちからの逆転満塁ホームランでしたが、「もうテレビ番組はこりごり」。以降の出演依頼は断りました。

[日経MJ(流通新聞)2018年5月2日付]

<<(8)イタリアへ豪華視察旅行、社員全員を送った理由

(10)悲願の株式公開機に…看板商品「ドリア」4割値下げ >>

「暮らしを変えた立役者」は金曜掲載です。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧